The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるAmpicillin坐剤 (KS-R1) の基礎的, 臨床的検討
豊永 義清黒須 義宇杉田 守正熊谷 公明堀 誠城 宏輔山崎 寿仁
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1983 年 36 巻 7 号 p. 1834-1845

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抄録

Ampicillin (ABPC) はβ-Lactam系抗生剤の代表的なものであり, 広域スペクトルで, その作用は殺菌的で, 毒性も低いことなど, 現在まで, 我国では最も頻用されている薬剤の1つである。しかし, 1977年以降, 我国における抗菌剤の消費量は, いわゆるβ-Lactam系抗生剤が増加し, その内でも経口剤の伸長が著しく, 耐性菌の増加が問題になつており, ABPCに関しても種々の菌株に対してその耐性率の増加は衆知の事実である。
小児科領域の細菌感染治療, 特に外来での加療において, 静脈内及び筋肉内投与では肉体的侵襲も強く, 又連続投与も不可能である点から投与しにくい。一般に行われている経口投与では, 腸管からの吸収が悪く, 外来診療において起因菌として多いStaphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Haemophilusinfluenzae 及びEscherichia coli 等に対して耐性菌が増加している現在, それらのMICを上回る血中濃度を維持するのは, 非常に困難である。これらの背景から, 血中濃度を注射剤のそれに近づけられる投与方法についての開発が望まれ, 坐剤での検討が行われたのである。現在まで, 抗生物質坐剤は吸収が悪く, 経口剤の血中濃度推移にも及ばず頻用するに至つてはいなかつたが, 基剤に脂肪酸のナトリウム塩を添加することにより, 吸収が非常に優れる結果を得, ABPC坐剤, すなわちKS-R 1が開発された。
今回, 我々はKS-R 1を使用する機会を得たので, 本剤について血中濃度などの基礎的研究を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したのでそれらの成績について報告する

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