1983 年 36 巻 7 号 p. 1959-1972
小児期の尿路感染症に対する化学療法は急性単純性の場合, Escherichia coliが大部分を占めていることから第1選択剤としてPenicillin系はAmpicillin (ABPC), Amoxicillin, Cephem系ではCephalexin, Cefradine, Cefatrizine, Cefaclorなどの経口剤が主に用いられている。しかしながら小児の中でも年少児はこれら尿路感染症に限らず他の細菌感染症でも抗菌剤の服用をきらう例が少なくなく, 注射によらなければならないこともあるが医師及びナースの手をわずらわせ簡便さに欠けることから経口と同等かそれ以上, できれば筋注に匹敵するBioavairabilityを有する抗生物質の坐剤の出現が望まれていた2) ところ, 京都薬品工業株式会社の研究所がABPCの坐剤化に成功し, KS-R1として京都薬品工業株式会社と住友化学工業株式会社が現在共同で開発中である。
KS-R1はABPCを125mg又は250mg力価含有する2剤型があり, 成人, 小児共にいずれの剤型も速やかに吸収され, 小児の最高血漿中濃度は投与15分後で, 経口の約4倍と高濃度を示し, 個人差はなく, 尿中濃度は経口に比較し高く, 6時間までの回収率も経口と同等かそれ以上で3), 私たちはわずか4例であつたがE.coliによる尿路感染症に対し本剤を投与したところ臨床効果及び細菌学的効果共に良好であつたことを別稿で報告した4)。
そこで本坐剤が起炎菌によつては小児の尿路感染症に対し有効性が期待できると考え, 今回症例を増し主に尿路由来の細菌に対する薬剤感受性, 臨床効果, 細菌学的効果, 坐剤の排出・排便状況及び副作用について検討したので, その成績を報告する。