The Japanese Journal of Antibiotics
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産婦人科感染症に対するCefmetazoleの基礎的及び臨床的検討
長澤 一磨佐藤 卓一笹村 二郎佐藤 重美高沢 哲也安斉 栄一片桐 清一奥山 敏夫蓮尾 豊漆畑 厚小川 克弘小倉 秀彦田辺 鷹康
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1984 年 37 巻 1 号 p. 63-87

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抄録

骨盤内感染症は, 産婦人科領域における代表的な内性器感染症で, われわれの日常の臨床においてしばしば遭遇する疾患群であり, 臨床的には軽症な子宮内感染症から, まれには重篤な骨盤内膿瘍更には敗血性ショックにいたる種々の病型がみられている。そのほか, 外性器における感染症として, バルトリン腺膿瘍は日常比較的多くみられる疾患の1つとしてあげることができる。いずれにしても本症の急性期に対する治療法の第1選択基準としては, 広汎なSpectrumを有する化学療法剤の投与が一般的に行われるが, 近年, 化学療法として, Cephalosporin系抗生剤, Penicillin系抗生剤の使用量増加に伴い, グラム陰性桿菌の耐性化が注目されるようになり, 臨床上大きな問題を提起しつつある1)。
今回, われわれは三共株式会社の研究陣により開発されたCephamycin系に属する新抗生物質であるCefmetazole (CMZ, Cefmetazon®)を用いて, 産婦人科領域における感染症への有用性を検討したが, 本剤は次のような著しい特徴を有している。
1. 耐性大腸菌を含むβ-Lactamase産生菌に対しても強い抗菌力を有している。2. グラム陽性及び陰性菌に対して優れた抗菌力を有しており, 特にグラム陰性菌には従来のCephalosporin系抗生剤より更に強力な抗菌力を有する。3. 従来のCephalosporin系, Penicillin系抗生剤が無効な嫌気性菌Bacteroides fragilis, Indolo陽性Proteusなどにも強い抗菌力を有する。4. 生体内において代謝を受けないため尿中に高率に排泄される。5. 急性, 亜急性, 慢性毒性, 腎毒性面でもいずれも低毒性が指摘されている。
従つて, われわれは上述の特徴などを踏まえて, 産婦人科領域の感染症を有する患者110例に臨床応用を行い, 本剤の高い有用性と優れた細菌学的効果を確認することができたのでその成績を報告する。

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