1984 年 37 巻 1 号 p. 88-96
小児の細菌性肺炎の起炎菌は未熟児・新生児や基礎疾患を有し感染防禦能の低下している患児を除けばグラム陽性球菌ではStreptococcus pneumoniae, Staphylococcus aureus, グラム陰性桿菌ではHaemophilus influenzaeが主である。近年H. influenzaeにはAmpicillin (ABPC)耐性菌が増加の傾向にあり問題になっているが, 今日S. aureusもABPCは接種菌量を106 cells/mlとした場合MIC25mcg/ml以上を耐性菌とすると, 1978年12月から1981年3月の臨床分離株で17. 7%, 1981年の分離株で22. 7%は耐性であつたと報告2, 3)されている。本菌の第1選択剤はBenzylpenicillin(PCG)に感受性の場合はPCGであるが, 耐性菌の場合にはMetbicillin, Oxacillin, Cloxacillin, DicloxacillinなどのPenicillinase耐性Penicillinか, Cephem系のCephalothin(CET)から選択されるが, CETよりもやや抗菌力が弱いcefazolin(CEZ)も用いられている。
しかしCET及びCEZに耐性のS. aureusもある2-4)ことからこれらよりMICはやや低いがβ-Lactamaseに安定性のあるcephamycin系のCefmetazole(cMZ)を症例によつては選択しなければならないこともある。
私たちはすでに小児科領域の重症細菌感染症であるS. aureus及びStaphylococcus epidermidisによる敗血症, 化膿性髄膜炎に対するCMZの有用性を報告したが, 今回呼吸器感染症中重篤な疾患で, ディスク感受性成績からではあるがCEZ耐性, CMZ感受性のS. aureusによる肺炎及び膿胸4例にCMZを投与し, その臨床効果, 細菌学的効果及び副作用を検討したので, その成績を報告する。