1984 年 37 巻 10 号 p. 1763-1765
感染症治療の成否を決定する要因の1つとして, 薬剤の抗菌力と感染局所での薬剤濃度が挙げられよう。呼吸器感染症についても, 喀痰中濃度や胸水中濃度について研究が進められ, 感染巣での起炎菌, 抗菌剤, 宿主側条件の関連性について, 具体的な検討がなされている。
Cefmenoxime (CMX) は, 武田薬品中央研究所で合成された, 第3世代のセフェム系抗生物質であり, グラム陽性菌, グラム陰性菌にわたり優れた抗菌力を有し, 又, 嫌気性菌やセラチア属等のいわゆる弱毒菌にも有効であることが知られている。これらのCMXの特徴から, 胸膜炎, 膿胸, 肺化膿症や基礎疾患を有する呼吸器感染症にも有用な薬剤と考えられる。
著者らは, これらの観点から, CMXの胸水中移行を知ることが, 胸膜腔における感染症にとつて有用と考え, CMX点滴静注による胸水中濃度を経時的に測定した。