The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
泌尿器科領域におけるCefotiamの組織移行性に関する臨床的検討
特に前立腺及び膀胱壁内移行について
越戸 克和多嘉良 稔上領 頼啓山本 憲男安井 平造古謝 哲哉藤井 光正橋本 治清水 芳幸城甲 啓治原田 宏行酒徳 治三郎林田 重昭藤沢 章二市川 哲也福田 和男佐長 俊昭原 好弘
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 37 巻 2 号 p. 229-236

詳細
抄録

Cefotiam(CTM)は, 武田薬品によつて開発されたいわゆる第2世代のセフェム系抗生物質であり, 化学的には, セフェム母核の7位側鎖にアミノチアゾール環が導入された最初の誘導体として注目されている(図1)。又, 抗菌活性面での特徴としては, このアミノチアゾール側鎖の導入により, 細菌外膜の透過性が改良されたため, 大腸菌, 肺炎桿菌などに対する抗菌力の増強と, インフルエンザ菌, インドール陽性プロテウス, エンテロバクター, シトロバクターなどにまで抗菌スペクトラムが拡大されており1~3), グラム陰性桿菌感染症を取扱う機会の多い泌尿器科領域では, その有用性が大いに期待されている。
事実, 泌尿器科領域における本剤の臨床的検討はすでに諸家4~20)によって十分なされており, 石神ら21)による慢性複雑性尿路感染症を対象とした二重盲検試験では, CTM2g/日投与により, Cefazolin 49/日投与と同等以上の有用性であつたとされている。又, ヒトにおける腎機能障害時の体内動態, 使い方などについても大川22), 薄田23), 和志田8), 今川24)らによつて報告されており, 泌尿器科領域でのCTMの評価は確立されていると言っても過言ではないが,本剤の泌尿器科領域における組織移行性に関する検討はわずかに加藤ら12)の報告がみられるだけである。
我々は, 抗生剤の有効性における組織移行性の持つ意義の重要性を勘案し, 山口大学泌尿器科及び関連病院の共同研究として, 前立腺及び膀胱壁への移行性を検討し若干の知見を得たので報告する。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top