The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるImipenem/Cilastatin sodiumの基礎的・臨床的検討
豊永 義清杉田 守正津田 隆高橋 孝行堀 誠
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1986 年 39 巻 7 号 p. 1765-1786

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抄録

小児科領域においても, 旧型Cephalosporin (CEPs) 剤の頻用に従い, β-Lactamase産生グラム陰性桿菌による感染症の増加が認められ1), 又, 宿主の感染抵抗性低下に乗じて定着し, 起病性を発揮するようになつた弱毒菌による感染症も増加している。こうした背景から開発されたいわゆる藤井の分類2)の第4, 5群のCEPSは上記の感染症に対して優れた臨床効果を示しているが, 最近ではMethicillin (DMPPC) 耐性ブドウ球菌4, 5), Cephem剤耐性ブドウ球菌の増加の報告3, 6~9)も多く, 又, Pseudomonas aeruginosaに対しても, 第5群の一部が, Amino-glycoside系薬剤とほぼ同様の抗菌力を持つにすぎず, 菌決定前の初期治療薬の選択の際, 第5群のCEPsでも必ずしも1剤での治療が危ぶまれることがあるのも事実である。さて, Imipenem (MK-0787, N-Formimidoyl-thienamycin) は米国メルク社において開発された新注射用Carbapenem剤で, その化学名は (5R,6S)-3-[[2-(Formimidoylamino)ethy1]thio]-6-[(R)-1-hydroxyethyl]-7-oxo-1-azabicyclo[3. 2. 0]hept-2-ene-2-carboxylic acidmonohydrateである。その化学構造式をFig. 1に示すが, MK-0787はペニシリン母核の1位の硫黄が炭素におきかわつたDesthiocarbapenem核を有する新しいβ-Lactam抗生物質ThienamycinのAmidine誘導体である。
本剤は, グラム陽性菌及び陰性菌に広く優れた抗菌力を示すが10, 11), 特に第5群のCEPsが抗菌力が弱かつたStaphylococcus aureusをこ対しては, セフェム剤耐性株を含め, 旧型のCEPs剤よりも優れていると報告12, 13)され, Enterococcus faecalisに対してもPiperacillin (PIPC) をしのぐ強い抗菌力を示し10, 13, 14)ており, 更に, P. aeruginosaに対しても, 第5群CEPsより優れていると報告10, 11, 14~16)されている。しかしながら, MK-0787は体内の主として腎においてDehydropeptidase-Iにより水解不活化されるため, この酵素の特質的阻害剤として, 同じく米国メルク社において, Cilastatin sodium (MK-0791) が開発され, MK-0787及びMK-0791を1: 1に配合した時, MK-0787の尿中回収率が最高に達し, 腎毒性も消失することが明らかになつた。今回, 我々は, MK-0787/MK-0791を使用する機会を得たので, 本剤について, 抗菌力, 吸収・排泄などの基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したのでそれらの成績について報告する。

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