The Japanese Journal of Antibiotics
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Rokitamycinの小児科領域における検討
岩井 直一宮津 光伸中村 はるひ片山 道弘笠井 啓子
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1988 年 41 巻 7 号 p. 885-900

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抄録

新しく開発されたMacrolide系抗生物質, Rokitamycin (RKM) の小児用Dry syrup剤について, 基礎的, 臨床的検討を行った。
1. 小児5例 (6~10歳) に本剤10mg小kgを食前30分及び食後30分に服用させた際の血漿中濃度と尿中排泄をCrossoverで検討した。血漿中濃度は, 食前投与では1/2時間0.16~0.85μg/ml (平均0.50±0.26μg/ml), 1時間0.13~0.71μg/ml (平均0.43±0.22μg/ml), 2時間N. D.~0.31μg/ml (平均0.15士0.12μg/ml), 4時間N. D.~0.11μg/ml (平均0.03±0.05μg/ml), 6時間N. D. で,食後投与では各々0.07~0.18μg/ml (平均0.11±0.05μg/ml), 0.09~0.23μg/ml (平均0.15±0.05μg/ml), N. D.~0.13μg/ml (平均0.09±0.05μg/ml), N. D.~0.08μg/ml (平均0.03±0.04μg/ml), N. D. であった。又, 0~6時間の尿中回収率は前者では0.15~2.42% (平均1.41±0.95%), 後者では0.46~1.30% (平均0.93±0.32%) であった. これらの成績から, 本剤は, 食後より食前投与の方がより吸収が速やかで, 高い血漿中濃度推移が得られることが推測された。又, 10mg/kg食前投与の血漿中濃度推移は, 成人にRKM錠を2錠投与した場合の推移とほぼ一致した。従って, 小児に対しては, 原則として1回10mg/kgを1日3回, 空腹時に投与するのが適当であると考えられた。
2. 小児期感染症39例 (1カ月~11歳3カ月) に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討を行った。
臨床効果の判定対象となった急性咽頭炎2例, 急性化膿性扁桃腺炎12例, 急性気管支炎1例, 急性肺炎9例 (Mycoplasma 肺炎3例), 急性化膿性リンパ節炎1例, 急性化膿性中耳炎2例, 百日咳1例, 急性腸炎2例に対する臨床効果は著効17例, 有効11例, やや有効2例であり, 著効と有効を含めた有効率は93.3%であった。又, 原因菌の判明した7例から分離されたStreplococcus pyogenes 4株, Haemophilus influenzae 3株に対する細菌学的効果は, S. pyogenes 1株が消失, 残る6株が存続であり, 除菌率は14.3%であった。更に, 副作用及び臨床検査値異常については, 認められた症例はなく, 服薬拒否や服用困難を訴えた症例もなかった。以上の成績から, 本剤は, 菌種によっては除菌効果に若干の問題があるものの, 臨床効果については, 従来からMacrolide系抗生物質が第1次適応と考えられてきた感染症を含め, 小児期の各種感染症に高い有効性が得られ, 安全性においても問題のない薬剤であると考えられた。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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