1988 年 41 巻 9 号 p. 1251-1260
注射用Cephalosporin系抗生物質Ceftriaxone (CTRX) について全国規模の研究会を組織し, 産婦人科周産期領域における薬動力学的評価並びに臨床的有用性を検討した。以下その成績を要約する。
1. 分娩前の妊婦にCTRX 1gをOne shot静注した際の母体血清中濃度は投与直後131.8μg/mlを示し, その後血清中濃度半減期 (T1/2) 6.7時間で, 緩徐に減衰した。
臍帯血清中濃度はTmax 4.9時間後にCmax 16.0μg/mlを示し, T1/2 8.1時間で緩徐に減衰し, 約12時間以降は母体血清中濃度を上回つた。
羊水中濃度はTmax 12.8時間後にCmax 9.6μg/mlを示し, T1/2 15.2時間で緩徐に減衰し, 約15時間以降は母体血清中濃度を上回り, 24時間後は臍帯血清中濃度とほぼ同値を示した。
2. 妊娠, 産褥期における各種感染症及び帝王切開術, 前期破水等の感染予防例89例のうち除外10例を除く79例につき臨床的有用性を検討した。
尿路感染等の分娩前の感染症7例で有効率100%, 産褥子宮内感染等の分娩後の感染症30例で有効率100%であつた。帝王切開及び前期破水時等の感染予防42例では有効率92.9%であつた。
細菌学的効果は26例から29株が分離され, 消失23株, 菌交代1株, 不変1株, 不明4株で消失率は96.0%であつた。
副作用は1例 (1.1%) に発疹・掻痒感がみられ, 臨床検査値異常はTransaminaseの上昇等10件, 7例 (7.9%) にみられた。
以上の成績からCTRXは産婦人科周産期領域においても有用な薬剤であると考えられた。