The Japanese Journal of Antibiotics
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複雑性尿路感染症に対するCefetamet pivoxilの臨床用量の検討
大森 弘之公文 裕巳金政 泰弘平井 義一斎藤 泰一
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1990 年 43 巻 12 号 p. 2102-2132

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抄録

複雑性尿路感染症に対する新規経口セフェム系抗生物質Cefetamet pivoxil (CEMT-PI, Ro15-8075) の臨床用量を検討する目的でCefaclor (CCL) を対照薬とした比較試験を行った。
対象は尿路に基礎疾患を有する複雑性尿路感染症で, カテーテル非留置症例であることを条件とし, 前立腺術後1ヵ月以内並びに緑膿菌感染症例を除外した症例を有効性解析対象とした。CEMT-PIの投与量は1日500mg分2 (CEMT-PI-L投与群) 及び1,000mg分2 (CEMTPI-H投与群), CCLは1,500mg分3 (CCL投与群) で7日間投与とし, 3日目及び7日目に総合臨床効果をUTI薬効評価基準 (第3版) に準拠して判定した。
臨床効果の評価対象としたCEMT-PI-L投与群の36例, CEMT-PI-H投与群の37例及びCCL投与群の30例について背景因子の検討を行つたが, いずれの項目においても3群間に有意な差は認められなかった。
総合臨床効果は3日目判定でCEMT-PI-L投与群で67.9% (19例/28例), CEMT-PI-H投与群で60.0% (18例/30例) 及びCCL投与群で72.0% (18例/25例) の有効率であり, 3群間に有意な差を認めなかった。7日目判定ではCEMT-PI-L投与群で63.6% (21例/33例), CEMTPI-H投与群で66.7% (24例/36例) 及びCCL投与群で72.4% (21例/29例) の有効率であり, 3群間に有意な差を認めなかった。細菌学的効果は3日目判定でCEMT-PI-L投与群の39株で79.5% (31株/39株), CEMT-PI-H投与群で73.2% (30株/41株) 及びCCL投与群で84.4% (27株/32株) の細菌消失率であり, 3群問に有意な差を認めなかった。7日目判定ではCEMTPI↓投与群で78.7% (37株/47株), CEMT-PI-H投与群で85.5% (47株/55株) 及びCCL投与群で94.9% (37株/39株) の細菌消失率であり, 3群間に有意な差を認めなかった。なお, 分離菌別に層別化した成績では, 有意差は認められないものの, 総合臨床効果, 細菌学的効果共に, グラム陽性菌ではCCL投与群, グラム陰性菌ではCEMT-PI-H投与群の成績が優れていた。
CEMT-PI-L投与群とCEMT-PI-H投与群の両群を比較した場合, 投与前分離菌に対するMIC分布がCEMT-PI-L投与群のほうがCEMT-PI-H投与群に比べて有意に感性側に偏っていたにもかかわらず, 7日目判定の総合臨床効果及び細菌学的効果はいずれもCEMT-PI-H投与群で高いこと, 副作用はCEMT-PI-L投与群及びCEMT-PI-H投与群で各1例しか認めなかったことなどを考慮すると, 1日1,000mg分2が複雑性尿路感染症に対するCEMTの至適投与量と考えられた。

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