1990 年 43 巻 12 号 p. 2133-2141
1989年に検出した新鮮臨床分離株を対象に, Macrolides (MLs) の抗菌活性を測定し, 過去の自験例と比較して, 臨床分離株のMLs耐性の経年的推移を疫学的な考察も加えて検討した。
1. Staphylococcus aureus に対するMLsのMIC分布は感受性側と耐性側の2峰性を示し, 耐性株の占める割合はErythromycin36%, Kitasamycin, Josamycin, Midecamycin, Midecamycinacetateが各々24%である。しかし, Rokitamycin (RKM) のMIC分布は≤0.39μg/ml (76%), 1.56~3.13μg/ml (12%), そして≥100μg/ml (12%) の3峰性を示した。
Staphylococcus epidermidis の成績も含めたStaphylococcus spp. のMLs耐性は, 14員環MLsと16員環MLsとでは耐性率に差があり, 更に16員環MLsの中では, RKMの耐性率が最も低いが, これらの差は耐性誘導能の強弱の差であることが考えられる。上述したS. aureus のMLs耐性株の占める割合は, 1975年以降の自験例の経年的比較では, 耐性率に変動が認められない。
2. Streptococcus pyogenes のMLs耐性株は4%, Streptococcus pneumoniae のMLs耐性株は18%である。1985年以降の自験例の経年的比較では, S. pyogenes のMLs耐性は明らかな減少, S. pneumoniae のMLs耐性は増加傾向を示唆していた。
3.グラム陽性菌のMLs耐性は耐性誘導すなわち誘導型の耐性であることから, 臨床でのMLsの使用にあたっては, 誘導能の弱い薬剤を選択することが大切である。