The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児, 未熟児におけるAztreonamの基礎的, 臨床的検討
豊永 義清杉田 守正中村 弘典河村 研一瀬尾 究
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1990 年 43 巻 3 号 p. 425-443

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抄録

Aztreonam (AZT) で治療した各種細菌感染症の治癒近い時期の日齢4~26日までの成熟児, 未熟児7例について, 10mg/kg, 20mg/kg, 50mg/kgをOne shot静注し, その後の血清中, 尿中濃度 (尿中回収率) を検討した。
臨床的検討は, AZT単独使用群19例, AZT+Ampicillin (ABPC) 併用群13例の計32例において検討した。前者においては, 0~43日齢の男児10例, 女児9例であり, 後者は6~41日齢の男児7例, 女児6例である。AZT単独使用群は感染予防5例を含めすべてAZTの効果判定が可能であつたが, ABPC併用群では13例中AZTの効果を判定できるのは, ABPC感性菌を除くと, 3例にすぎなかつた。
1.血清中濃度推移及び尿中回収率
成熟児5例 (10mg/kg2例, 20mg/kg3例) では, いずれも30分にピーク値 (初回採血時) を示し, 10mg/kgでは29.1μg/ml, 20mg/kgでは37.8μg/ml,(4~7日群) 55.5μg/ml (8日以上群) であり, 半減期は, それぞれ3.42, 3.05, 1.58時間であった。8日以降の群は1例であるが, 半減期は短縮していた。尿中回収率は10.4~52.6%が6時間までに回収されたが, 個体による差が認められた。
未熟児は同一症例において11日齢, 19日齢で検討したが, 30分値 (初回採血時) にピークを示し, 106.8, 90.4μg/ml, 8時間では16.2, 9.6μg/mlであり, 半減期は2.62, 2.35時間であつた。尿中回収率は11日齢において4時間までであるが21.1%であつた。
2.臨床成績
AZTの臨床効果の判定基準を満たしたものはAZT単独使用群では全例であり, その疾患の内訳は, 化膿性髄膜炎1例, 菌血症, 敗血症 (疑いを含む) 5例, 肺炎2例, 尿路感染症6例, 感染予防5例の計19例であり, 全例に有効以上の成績を示した。細菌学的には, 感染予防の5例を除く14例中13例に起因菌が判明し (Escherichia coli7例, Klebsiella pneumoniae5例, Pseudomonas aeruginosa1例), すべて経過中に消失した。本剤の投与量は感染予防症例を除き36.9~152.7mg/kg/日にわたつていたが, 菌血症, 敗血症, 髄膜炎例では100mg/kg/日を上回る投与量を示したものが, 6例中3例に認めた。
ABPC併用例では, AZTの臨床効果判定が可能であつたものは13例中3例であつたがいずれも尿路感染例であり, いずれも有効以上の成績を示した。起因菌はP.aemginosa, Morganellamorganii+Klebsiella oxyma, E.coli+Bacteroides fragilisであり, 3例とも経過中に消失した。投与量は60.5~66.1mg/kg/日であった。
副作用としては, 自他覚的副作用は全例に認めず, 臨床検査値異常としては, AZT単独使用群で, 感染予防例の1例に好酸球増多が認められた。

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