The Japanese Journal of Antibiotics
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ミノサイクリンの血中, 組織内抗菌濃度評価へのアプローチ
ミノサイクリンディスク感受性テストの定量的評価, 特にディスクテストにおけるMIC break pointsの再検討と臨床的意義
植手 玄洋松尾 清光植手 鉄男
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1990 年 43 巻 9 号 p. 1545-1558

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抄録

.ミノサイクリン (MINO) の適確な臨床利用を行うためにMINOディスク (200, 30, 5μg含有) テストの阻止円直径とMICとの関係を各種臨床分離菌 (1988年度) 270株について吟味し, ディスクテストにおけるin vitro MIC break point の設定, 精度の再評価を行った。
2.MINOのStaphylococcus aureus, Staphylocuccus epidermidis, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae などへのMIC80値は0.78μg/ml以下であった。又, 高度多剤耐性S.aureus (MRSA) 15株へのMINOの抗菌力は全株がディスクテストで帯, で, 良好であった.
グラム陰性桿菌へのMINOのMIC80値はH. influenzae 0.39 μg/ml, Escherichia coli 6.25μg/ml, Klebsiella pneumoniae 3.13 μg/ml, Proteus mirabilis 25 μg/ml, Proteus vulgaris 50μg/ml, Pseudomonas aeruginosa 50 μg/ml, Serratia marcescens 100 μg/ml, Enterobacter spp.50, μg/ml, Citrobacter spp. 12.5 μg/ml であった。
3.200μg又は30μg含有ディスクいずれにおいても阻止円直径とMIC実測値とはよき相関関係を示した (n=259, r=-0.67及びn=239, r=-0.65) 。
200μg含有ディスク結果はメーカー指定のとおり, 30μg含有ディスクについては本研究で仮設定したとおり, 阻止円直径を4分類し,(+++) MIC≤2μg/ml,(++) MIC>2-10μg/ml,(+) MIC>10-50μg/ml,(-) >50μg/mlとして評価した場合, Falsepositiveはそれぞれ26.6%, 20.5%, Falsenegativeは5.8%, 23.6%認められた。しかし,(柵) MIC≤3μg/ml,(++) MIC>3-15μg/ml,(+) >15-50μg/ml,(-) >50μg/mlとして4分類評価した場合, Falsepositiveはそれぞれ12%, 6.2%, Falsenegativeは5.8%, 23.6%となった。
MIC1μg/mlのBreak pointの設定はいずれのディスクにおいても阻止円直径上に90%以上の精度において可能であつた。
4.MINO常用量投与時の血中濃度, 組織移行, 喀痰濃度, 尿中排泄などの薬動力学的知見, 本研究でみられた各種臨床分離細菌株に対するMIC値を併せ考慮した場合, in vitro MIC breakpointsをMIC 1μg/ml, 3μg/ml, 15μg/mlと設定し, ディスクテスト結果を4分類評価するのがより合理的である。精度の高いディスクテストが可能となり, 臨床上有用である。

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