The Japanese Journal of Antibiotics
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血中有効濃度を得るためのピペラシリン投与量設定, 評価へのアプローチ
ピペラシリンディスク感受性結果の定量的評価, 特にディスク感受性検査におけるMIC break pointsの再検討と臨床的意義
松尾 清光植手 鉄男
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1990 年 43 巻 9 号 p. 1559-1571

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抄録

1.ピペラシリン (PIPC) に対する各種臨床分離菌のin vitro ディスク感受性結果の信頼性について, 昭和ディスク (30μg含有), 自家製ディスク (30μg, 10μg含有) を用いて最小発育阻止濃度 (MIC) 実測値と比較した.更にディスク感受性検査値の臨床利用に際してのin vitro MIC breakpoints については, 昭和ディスク, NCCLS, British Society for Antimicrobial Chemotherapy 提案のMIC break points それぞれの臨床利用上の諸点を考慮し, 吟味, 検討した。
2.北野病院 (大阪市) において1988年1-6月に至る間, 各種臨床材料から無作為に分離された各種細菌に対するMICを寒天平板希釈法で測定した。PIPC3.13,125, 50μg/mlの濃度で発育阻止されたStaphylococcus aureus は, それぞれ20, 43.3, 43.3%であった。同様にStaphylococcusepidermidis は41.4, 72.4, 82.8%, Enterococcus faecalis73.3, 93.3,100%, Escherichia coli64.5, 71, 90.3%, Klebsiella pneumoniae40, 90, 90%, Indole (-) Proteus spp.93.8,100,100%, Indole (+) Proteus spp.72.7,100,100%, Pseudomonas aeruginosa50, 70, 73.3%, Serratia spp.37.5, 81.3, 96.9%, Enterobacter spp.55.2, 65.5, 75.9%, Citrobacter spp.62.5, 68.8, 81.3%であった。
3.30μg含有昭和及び自家製ディスクの4分類評価法を (惜) MIC≤3μg/ml,(++) MIC>3-15μg/ml,(+) MIC>15-60μg/ml,(-) MIC>60μg/mlとした場合, 両ディスクとも阻止円直径とMIC実測値との間に良い負の相関関係がみられた.両ディスク結果から, MIC値を推定することは可能である。False positive は9.2-ll.6%, False negative は1.8-2.8%であった。NCCLS, WHOの分類によると, PIPCのBreak points はMIC64,256μg/mlに設定されている。しかしながら, 30μg含有ディスク (昭和, 自家製) 共に, MIC64μg/mlのBreak point を設定することは可能であったが, MIC256μg/mlのBreak point を設定することは不可能であった。又, British Society for Antimicrobial Chemotherapy 提案のMIC break points 16μg/ml及び64μg/mlは昭和及び自家製30μgディスクの阻止円直径上へ設定が可能であり, False positiveは6.3-7.4%, False negative は1.1-1.4%であった。
30μg及びそれ以下の含有量のディスク, 例えば10μgでは阻止円直径からMIC≤0.05μg/ml, MIC>0.5-3μg/ml, MIC>3-15μg/ml, MIC>15μg/mlの菌に分類し得たが, MIC>15μgに分布する菌の判別は不可能であった。
4.PIPCの血中濃度, 各種組織移行等の薬動力学的知見及び各種臨床分離菌株に対するMICからみた効菌力を合せて考慮したところ, 通常の投与量でのin vitro MIC break points は3μg/ml又は, 15 (16) μg/ml以下を感受性, 60 (64) μg/ml以上を耐性と設定することが合理的と思われる。しかしながら, 尿, 胆汁のように高濃度に薬剤の排泄がみられる場合, MIC64μg/mlと256μg/mlの2点に, 又, 髄液等のように薬剤移行の少ない場合には, MICO.5-3μg/mlにBreak points を設定することも有意義である。

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