The Japanese Journal of Antibiotics
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小児期における経口抗生物質についての薬動力学的検討 (第5報)
小児期におけるCefdinirについての薬動力学的検討
中村 はるひ岩井 直一
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1992 年 45 巻 1 号 p. 12-27

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抄録

小児期におけるCefdnir (CFDN, FK482) の小児用細粒剤 (5%力価) についての吸収, 排泄を検討すると共に, 薬動力学的解析を加えた。
1. 学童, 幼児, 乳児の各年齢層に分けて, 食事の影響について検討した。
学童14例及び6例におけるCFDN3mg/kg食前30分及び食後30分服用後の成績では, 前者のTmaxは2.00±0.00時間,Cmaxは1.14±0.11μg/ml, T1/2はL63±0.14時間, 尿中回収率 (0~8時間) は23.68±2.92%で, 後者ではそれぞれ3.67±0.33時間, 0.71±0.06μg/ml, 2.18±0.16時間, 21.76±2.36%であつた。食前投与の方が明らかにTmaxが早く得られ, 高いCmaxを示したが, 尿中回収率については両投与方法の間に有意差は認められなかった。しかし, Crossover法でみた6例だけの検討では, 尿中回収率においても食前投与でかなり高い傾向がみられた。
幼児19例及び6例の3mg/kg食前30分及び食後30分服用後の成績では, 前者のTmaxは2.11±0.11時間, Cmaxは0.98±0.14μg/ml, T1/2は1.71±0.23時間, 尿中回収率は23.60±1.72%で, 後者ではそれぞれ3.33±0.42時間, 0.47±0.14μg/ml, T1/2は2.35±0.27時間, 12.24±2.02%であった。食前投与の方が明らかにTmaxが早く, 高いCmaxを示し, 尿中回収率も高い値が得られた。
乳児7例及び8例の3mg/kg食前30分及び食後30分服用後の成績では, 前者のTmaxは4.00±0.62時間, Cmaxは0,61±0.13μg/ml, T1/2は3.14±0.62時間で, 後者ではそれぞれ3.75±0.25時間, 0.79±0.13μg/ml, 2.44±0.42時間であり, 両投与方法間に有意差は認められなかった。
2. 学童において用量依存性を検討した。学童14例及び7例における3mg/g食前30分及び6mg/kg食前30分服用後の成績では, 前者のCmaxは1.14±0.11μg/ml, AUCは4.44±0.41μg・hr/mlであり, 後者ではそれぞれ1.37±0.23μg/ml, 6.14±0.88μg・hr/mlであった。Cmaxでは明らかではなかったが, AUCについては明らかなDose responseが認められた。なお, Crossover法でみた6例だけの成績ではCmaxにおいても明らかなDose responseが確認された。
3. 食前投与と食後投与とに分けて, 年齢による差異を検討した。
学童14例, 幼児19例, 乳児7例における3mg/kg食前30分服用後の成績では, Tmaxは学童, 幼児, 乳児でそれぞれ2.00±0.00時間, 2.11±0.11時間, 4.00±0.62時間で, 乳児で明らかに遅く得られる傾向があつた。Cmaxについてはそれぞれ1.14±0.11μg/ml, 0.98±0.14μg/ml, 0.61±0.13μg/mlで, 乳児が最も低い値を示した。又, T1/2についてはそれぞれ1.63±0.14時間, 1.71±0.23時間, 3.14±0.62時間と, 乳児において明らかに長い傾向が認あられた。更に, AUCについては, 各年齢層間に差は認められなかつた。学童6例, 幼児6例, 乳児8例における3mg/kg食後30分服用後の成績では, Tmaxは学童, 幼児, 乳児でそれぞれ3.67±0.33時間, 3.33±0.42時間, 3.75±0.25時間, Cmaxは0.71±0.06μg/ml, 0.47±0.14μg/ml, 0.79±0.13μg/ml, T1/2は2.18±0.16時間, 2,35±0.27時間, 2.44±0.42時間であり, 三者間に有意差は認められなかった。しかし, AUCについては, それぞれ4.07±0.44μg・hr/ml, 253±0.56μg・hr/ml, 4.81±0.78μg・br/mlと, 幼児では他の年齢層に比べて小さい傾向があつた。

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