The Japanese Journal of Antibiotics
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Cefdinirの腸内細菌叢に及ぼす影響
岩田 敏川原 和彦池田 昌弘磯畑 栄一金 慶彰楠本 裕佐藤 吉壮秋田 博伸南里 清一郎老川 忠雄横田 隆夫砂川 慶介市橋 保雄
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1992 年 45 巻 1 号 p. 28-47

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抄録

新しい経口用セフェム系抗生物質であるCefdinir (CFDN) について, 4種感染マウス及び小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす彰響を検討した。
Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4種感染マウスに, CFDN5%細粒10mg/kgを1日1回, 連続5日間経口投与した結果, 糞便中の生菌数は,E.coliが投与開始後3~5日目に減少傾向を示した以外, 大きな変動は認められなかった。
小児臨床例における検討は, 感染症の小児7例 (男児3例, 女児4例, 年齢6ヵ月~12歳7カ月, 体重5.5~29.2kg) に対し, CFDN5%もくしは10%細粒1回3.0~3.7mg/kgを1日3回, 4~14日間経口投与して行つた。CFDN投与中の糞便内細菌叢の変動は症例により若干のばらつきが認められたが, 2例でEnterobacteriaceaeと嫌気性菌総数の著明な減少が認あられたものの, 好気性菌総数に変動はなく, 他の症例においても一部でEnterococcusの一過性の減少が認められた以外, 主要な好気性菌及び嫌気性菌にあまり大きな変動は認められなかった。又, ブドウ糖非醗酵性グラム陰性桿菌や真菌が持続的に優勢菌種として認められる症例もなかった。Clostridium difficile及びC.difficile D-1抗原はそれぞれ1例及び4例で検出されたが, その消長と便性には関連性がなかった。
糞便から分離した菌種のCFDNに対する薬剤感受性を投与前, 中, 後で比較すると, Enterococcus, Bacteroidesなど一部の菌種で投与中もしくは投与後に耐性化する傾向がみられた。
糞便中のCFDNは2例で投与中の検体から検出されたが, 糞便中のβ-Lactamase活性が陰性だった1例では254μg/gと高濃度を示し, Enterobactedaceaeと嫌気性菌総数の著明な減少が認められた。
以上の成績から, CFDNは腸内細菌叢に及ぼす影響の比較的少ない薬剤と考えられるが, 症例によっては薬剤が糞便中に比較的高濃度に検出される場合もあるので注意が必要で, 長期間投与を続けるような場合には下痢や菌交代に対する配慮が必要である。

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