1992 年 45 巻 6 号 p. 697-717
新規に開発されたカルバペネム系抗生物質Meropenem (SM-7338, MEPM) の小児科領域における基礎的・臨床的検討を目的とした研究会を組織し, 全国17基幹施設とその関連施設による協同研究を実施し, 以下の結果を得た。
1. 血中濃度及び尿中排泄率
53例の小児にMEPM1回10, 20mg/kg及び40mg/kgを点滴静注し, 体内動態を検討した。
1歳以上の50例における平均血中ピーク濃度はそれぞれ28.5, 47.2μg/mI 及び130.0μg/ml, 半減期は0.80, 0.93時間及び0.94時間であつた。乳児 (1歳未満) では少数例での検討であったが, 大きな差はみられなかった。
尿中排泄率は投与後6時間までに54.4~68.1%が回収された。
2. 髄液中濃度
化膿性髄膜炎症例に対し1回量29~44mg/kgを投与した場合病日4口以内では0.64~4.22μg/mlの髄液中濃度を示した。
3. 臨床成績
総症例は412例であり, 除外・脱落を除いた386例に2疾患合併の3例をそれぞれの疾患, に加えた389例が臨床効果判定解析症例となった。
臨床効果は原因菌の判明したA群248例で著効175例, 有効67例, 有効率97.6%, 原因菌不明のB群141例で著効75例, 有効59例, 有効率95.0%と優れていた。A群とB群を合せた疾患別臨床効果は, 化膿性髄膜炎100% (11例/11例), 敗血症85.7% (6例/7例), 肺炎98.8% (171例/173例), 尿路感染症100% (65例/65例) 等であった。細菌学的効果は起炎菌と判明された269株巾260株, 96.7%に除菌効果が得られた。グラム陽性菌ではstaphylococcusaums37株で89.2%, streptococcuspneumoniae35株で100%等, 合計93株で消失率94.6%を示した。又, グラム陰性菌ではHaemophilusinfluenzae73株で98.6%, Pseudomonasaeruginosa11株で90.9%, Branhamellacatarrhalis15株, Escherichiacoli42株, Klebsiellapneumoniae6株はすべて消失し, 合計172株で98.3%の消失率であった。
先行抗生物質3日以上投与で無効例84例では著効49例, 有効28例, 有効率91.7%と優れていた。細菌学的には46株中44株, 95.7%が除菌された。
4. 副作用及び臨床検査値異常
安全性に対する検討は, 総投与例412例から併用薬違反, 投与口数不足等の9例を除いた403例について検討した。
副作用は下痢, 発疹, 水様便, 軟便が5例, 1.2%に認められた。臨床検査値異常はGOT, GPTL昇, 好酸球増多等58例に認められ, 投与終了後改善する一過性の変化に過ぎなかったが, その発現頻度が約14%とやや高いことから今後観察の必要があると考えられた。
以上の成績から, MEPMは小児科領域においても成人同様有効であり, 安全性も高く特に重症感染症に対しては第1選択薬になり得るものと評価された。