The Japanese Journal of Antibiotics
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S-1108の小児科領域における基礎的, 臨床的検討
中村 はるひ岩井 直一宮津 光伸渡辺 祐美
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1993 年 46 巻 11 号 p. 1003-1016

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抄録

新しいエステル型経口セファロスポリン系抗生物質であるS-1108の小児用細粒剤について, 基礎的, 臨床的検討を行った。
1. 小児6例 (5~8歳) における本剤投与後の血漿中濃度と尿中排泄について検討を行った。
4mg/kgを食後30分に投与した際の平均血漿中濃度は, 2時間値の0.86±0.39μg/mlがピークで, その後1.14±0.23時間の半減期をもって漸減し, 8時間値は0.09±0.04μg/mlであった。又, 8時間までの尿中回収率については平均25.5±4.7%であった。
2. 小児期感染症35例 (10ヵ月~11歳) に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用, 及び服用性について検討を行った。尚, 1回の投与量は2.0~42mg/kg, 1日の投与回数は3回, 投与日数は1/3~10日, 総投与量は0.1~2.38gであった。
臨床効果の判定対象となった急性咽頭炎1例, 急性化膿性副鼻腔炎1例, 急性化膿性扁桃炎6例, 急性気管支炎7例, 急性肺炎15例, 急性尿路感染症1例, 計31例に対する臨床効果は, 著効19例, 有効12例で, 著効と有効を含あた有効率は100%であった。又, 原因菌と推定されたStaphylococcus aureus 4株, Streptococcus pyogenes 1株, Haemophilus influenzae 9株, Escherichia coli 1株, 計15株に対する細菌学的効果は, S. aureus 2株とH. influenzae 1株が減少であった以外は消失と判定され, 除菌率は80%であった。尚, 菌交代は, 常在細菌叢からH. influenzeへの交代が1例とE. coliからEnterococcus faecalisへの交代が1例, 計2例において認められた。副作用は, 軽度の下痢が2例に認められただけで, 他の異常は認められなかった。又, 臨床検査値異常については, GOT・GPTの軽度上昇, GPTの軽度上昇が1例ずつ認められただけであった。更に, 服用性については, 飲みにくいと訴えたものが1例認められただけで, 他の症例では問題なく服用できた。
以上の成績より, 本剤は小児期感染症において高い有効性が期待でき, しかも安全に投与できる薬剤であると考えられた。

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