The Japanese Journal of Antibiotics
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小児におけるS-1108の基礎的・臨床的検討
田島 剛近藤 康夫根岸 祥子西村 修一吉田 晶子萩原 教文新實 了江嵜 英美金子 衣野阿部 敏明
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1993 年 46 巻 11 号 p. 953-958

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抄録

小児におけるS-1108の基礎的・臨床的検討を行った。臨床検討の対象は, 9ヵ月から10才までの11例であった。投与方法は原則として1回3mg/kg, 1日3回 (溶連菌感染の1例は1回2mg/kg, 1日2回), 食後30分経口投与を4~14日間行った。
細菌感染症10例 (菌血症1例, 肺炎4例, 上顎洞炎1例, 百日咳1例, 猩紅熱1例, 溶連菌咽頭炎2例) に対する有効率は100%であった。1例のみ判定不能としたが, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) によるStaphylococcal scalded skin syndrome (SSSS) でγ-Globulinの使用とともに軽快したため, 本剤による効果とは判定し難かった。起炎菌が判明し判定可能な症例では9例中7例が著効, 有効が2例と著効率が勝っており, 全例有効以上であった。
臨床的副作用, 検査値異常は11例全例に認められなかった。
細菌学的効果を判定し得た10例からは, 5菌種14株が分離された。菌種別にみると, Streptococcus pneumoniae 3/5, Haemophilus influenzae 1/2, Branhamella catarrhalis 2/3, Staphylococcus aureus (MRSA) 0/1, Streptococcus pyogenes 3/3がそれぞれ消失した。S. pneumoniaeではMICの測定できた4株はすべてペニシリンG (PCG) に対するMICが0.10μg/ml以上のペニシリン低感受性肺炎球菌であることを考慮すると, 成績は良いと考えられた。
2例についてS-1108を3mg/kg, 食後30分経口投与し, 血中濃度を測定した。S-1006の最高血中濃度は投与後1時間と4時間にあり, 各々1.03μg/mlと0.74μg/mlであった。
以上の成績並びにS-1006の肺炎球菌とインフルエンザ菌に対する強い抗菌力から, 本剤は小児の気道感染症の初期治療に単剤で使用し得る有望な抗生物質と考えられた。ただしブドウ球菌による皮膚軟部組織感染症に対しては, やや多めの投与量を用いないと十分な効果が得られない可能性があると考えられた。

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