2023 年 25 巻 1 号 p. 1-13
青森県の津軽半島を走るJR東日本のローカル線・津軽線は,2022年8月の豪雨で北側半分の区間が被害を受け,運休を余儀なくされた.沿線の外ヶ浜町と今別町は人口減少と高齢化が進んでおり,将来的に大きな需要が見込めない.一方で,JR東日本は2022年7月,津軽線とデマンド型乗合タクシーを組み合わせた新しい交通体系の構築を試行していた.このため,JR東日本は2町と青森県に対し,検討組織の開設を呼び掛け,運休区間の鉄道を廃止してバスとタクシーを組み合わせた交通体系を構築するプランを提案した.地元側は鉄道の存続を希望しているが,2023年9月現在,結論は出ていない.問題の本質は,鉄路の存廃ではなく「地域の持続可能性の確保」であり,当事者間のアジェンダ設定とコミュニケーションの手法には,いくつか改善の余地が存在する可能性がある.