抄録
カジノナガキクイムシのホストへの飛翔時間の雌雄間差をコナラとミズナラの枯損被害林で調査した。早朝曇天でその後日がさした日は雄よりも雌の捕獲ピークが早かった。晴天の日は雌雄の捕獲ピークは同じであったが,雌は飛翔開始が早く,飛来の終息も早い傾向がみられた。交尾に至るまでに,雄には穿入孔を掘るというコストがあり,ホスト到着後に活発な活動ができる晴天時に飛翔する方がコストが小さい。雌には交尾可能な雄をめぐる競争というコストがあり,天候にかかわりなくいち早く飛翔して競争を避ける方がコストが小さい。そうしたことから,飛翔時間の雌雄間差が生じるのであろうと考えた。