抄録
大都市圏のひとつである大阪府を取り上げ,聞き取り調査とアンケート調査の結果および統計資料から,製材業の実態と大阪府内で生産された素材の流通を明らかにするとともに,大都市圏の製材業と地域産材の結びつきについて考察を行った。大阪府には国産材一般建築用材を大量に見込み生産し,製品市場や問屋へと出荷するような工場はなく,府産材は主として製品の仕入販売に経営の重点をおく小規模な小売製材によって消費されている。こうした工場は非規格品や急な調達を必要とするいわゆる注文材を主体に製材しており,ヒノキの芯持ち柱や造作類,スギの芯持ち柱や板類,小割類,マツ・米マツの横架材などを少量ずつ生産している。高級住宅建築需要に支えられて非規格品需要が比較的多く存在することから,小売製材は府南部を中心に数多く存在している。こうした小売製材と府産材を結び付ける機構として,大阪府産材の約7割を集荷する大阪府森連木材センターが重要な役割を果たしている。