通常、錠剤は分割せずに調剤されるが、臨床現場では、薬用量の調節が必要な患者や処方された錠剤の規格が病院や保険薬局で採用されていない場合などに錠剤を分割して調剤することがしばしば行われている。一方で、錠剤の分割による質量の損失と薬物溶出挙動への影響を最小限に留める必要がある。そこで本研究では、より安全かつ確実な薬物治療を提供することを目的として、糖尿病治療薬で処方頻度の高いシタグリプチン錠の病院における採用状況と分割調剤について調査し、さらに適切な半錠分割方法の検討と分割時の薬物溶出挙動への影響を評価した。シタグリプチン錠は調査した34施設の90%以上で採用されていた。50 mg/錠の1規格採用が80%以上を占めていた。分割調剤は、50 mg/錠のみの採用施設すべてで25 mg処方時に行っていた。そこで、半錠分割時のばらつきを検証したところ、はさみ分割とスパーテル分割でははさみ分割の方が有意に少なかった。また、ジャヌビア®錠50 mg/錠・0.5錠とジャヌビア®錠25 mg/錠・1錠の溶出率の比較では、薬物溶出挙動が著しく異なることが明らかとなった。従って、ジャヌビア®錠のような割線を有する錠剤であっても錠剤重量のばらつきが少ないはさみ分割が適切な分割方法であり、同用量でも既製品と分割錠では経時的な溶出率が異なるため、容易に分割調剤することは望ましくないと考えられた。