アプライド・セラピューティクス
Online ISSN : 2432-9185
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16 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • Chikako Masudo, Mitsuki Shiroma, Naomi Yamashita, Kiyoshi Mihara
    2021 年 16 巻 p. 1-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/03
    ジャーナル フリー
    Background: Teriflunomide (TER) and dimethyl fumarate (DMF) have been approved as first-line oral treatments for relapsing-remitting multiple sclerosis (RRMS) in the United States and Europe. Therapeutic positioning of TER in RRMS management have not been fully established. Therefore, this study was aimed at directly comparing the efficacy and safety of these two drugs for treating RRMS by conducting a meta-analysis. Methods: We searched MEDLINE, the Cochrane Library, and Igaku Chuo Zasshi databases for articles included until December 2020. The inclusion criterion was a clinical study comparing the efficacy and safety of TER and DMF in patients with RRMS. Results: Among 263 relevant articles, 16 cohort studies were found eligible for inclusion in the meta-analysis. There were no significant differences between TER and DMF in total relapses (odds ratio, OR: 1.15 [95% confidence interval, 95% CI: 0.94-1.40]), Expanded Disability Status Scale progression (OR: 1.38 [95% CI: 0.80-2.39]), MRI activity (OR: 1.09 [95% CI: 0.63-1.88]), incidence of adverse events (OR: 0.83 [95% CI: 0.44-1.55]), and treatment discontinuation due to adverse events (OR: 0.90 [95% CI: 0.73-1.12]). The TER-associated rate of treatment discontinuation due to inefficacy (OR: 2.17 [95% CI: 1.85-2.53]) was significantly higher than that associated with DMF. Conclusions: TER was as effective and safe as DMF, except for the rate of treatment discontinuation due to inefficacy. Thus, TER could be a treatment option for RRMS in Japan.
  • 石村 淳, 生島 五郎
    2021 年 16 巻 p. 17-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病治療において、合併症の発症等を予防するためには血糖値のコントロールが重要である。近年、治療薬の中でもGLP-1受容体作動薬は、海外の主要な糖尿病治療ガイドラインにおいても使用が推奨されており、様々な研究が行われ、血糖値改善効果のみならず、脂質値改善作用、肝機能異常値の改善、腎保護効果など多面的作用が期待されている。GLP-1受容体作動薬には、週1回投与の長時間型製剤と連日投与の短時間型製剤が存在し、アドヒアランスは週1回投与の方が良いとされるが、検査所見での比較の報告はない。そこで、GLP-1受容体作動薬の中でも高い処方率を占める週1回製剤デュラグルチドと連日製剤リラグルチドの2剤について検査所見の比較検討を行った。調査はレトロスペクティブに行い、HbA1c、LDL-C、HDL-C、トリグリセリド、AST、ALT、γ-GTP、eGFRの8項目を診療録から抽出し、投与開始時と投与開始6ヶ月後の変化を評価した。その結果、デュラグルチド群とリラグルチド群は、両群ともに投与開始6ヶ月後でHbA1cの有意な減少が認められた。さらに、デュラグルチド群では、トリグリセリドにおいても有意な減少が認められた。したがって、デュラグルチドとリラグルチドは脂質値改善効果も期待できることが推察された。
  • 佐藤 弘康, 蝦名 勇樹, 村上 智香, 石田 陽美, 津田 雅大, 田中 悠季, 三本松 泰孝, 田村 広志
    2021 年 16 巻 p. 25-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病治療における有効性指標としてHbA1cが広く用いられており、その重要な予測因子の1つに投与前HbA1cが挙げられている。今回、DPP-4阻害薬が単剤療法として導入された糖尿病患者を対象として、投与前6か月間のHbA1c情報を用いる際の最適な補間方法を探索するために、投与前HbA1c情報と3か月後のHbA1c情報との関連性を調査した。 221名を調査した結果、投与直前HbA1cと最も良い相関を示したものは、投与後HbA1cの実測値(相関係数0.59)であり、変化差および変化率よりも高い相関係数であった。一方、投与後HbA1cとの相関を種々の投与前HbA1c情報を用いて比較した結果、投与直前値1点よりも投与前6か月間のHbA1c情報を用いた場合に高くなる傾向が確認された。最も高い相関係数を示したのは、投与前HbA1c情報を後向きに補間した方法(相関係数0.62)であった。 HbA1cには個体内変動が存在する。投与前HbA1c情報において、投与直前1点よりも6か月間における複数回の情報を利用した場合に、投与後HbA1cとより高い相関が得られた。これは、個体内変動の影響を縮小できたためと考えられる。また、その中でも後向きに補間する方法が最も高い相関を示したことは、HbA1cが過去1~2か月の血糖状態を示す指標であることからも矛盾しない。本研究は、DPP-4阻害薬の投与前HbA1c情報を単変量解析した探索的調査であるが、HbA1c低下作用の予測因子として、投与前6か月間のHbA1c情報を後ろ向きに補間する方法が有用である可能性を示した。
  • 石村 淳, 瀧沢 裕輔, 佐古 兼一
    2021 年 16 巻 p. 36-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー
    通常、錠剤は分割せずに調剤されるが、臨床現場では、薬用量の調節が必要な患者や処方された錠剤の規格が病院や保険薬局で採用されていない場合などに錠剤を分割して調剤することがしばしば行われている。一方で、錠剤の分割による質量の損失と薬物溶出挙動への影響を最小限に留める必要がある。そこで本研究では、より安全かつ確実な薬物治療を提供することを目的として、糖尿病治療薬で処方頻度の高いシタグリプチン錠の病院における採用状況と分割調剤について調査し、さらに適切な半錠分割方法の検討と分割時の薬物溶出挙動への影響を評価した。シタグリプチン錠は調査した34施設の90%以上で採用されていた。50 mg/錠の1規格採用が80%以上を占めていた。分割調剤は、50 mg/錠のみの採用施設すべてで25 mg処方時に行っていた。そこで、半錠分割時のばらつきを検証したところ、はさみ分割とスパーテル分割でははさみ分割の方が有意に少なかった。また、ジャヌビア®錠50 mg/錠・0.5錠とジャヌビア®錠25 mg/錠・1錠の溶出率の比較では、薬物溶出挙動が著しく異なることが明らかとなった。従って、ジャヌビア®錠のような割線を有する錠剤であっても錠剤重量のばらつきが少ないはさみ分割が適切な分割方法であり、同用量でも既製品と分割錠では経時的な溶出率が異なるため、容易に分割調剤することは望ましくないと考えられた。
  • 相原 史子, 蓑毛 翔吾
    2021 年 16 巻 p. 44-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    ラコサミド (lacosamide: LCM)は、電位依存性Naチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進することにより過興奮状態にある神経細胞膜を安定化させる抗けいれん薬である。治療濃度域が確立されていないとされ、TDM(Therapeutic Drug Monitoring)の施行は一般的ではない。今回、LCM 300 mg/dayで投与中、てんかん発作による意識障害を主訴に救急搬送された61歳代男性の治療経過中に、発作性心房細動・徐脈頻脈症候群が出現し、病棟担当薬剤師が血漿中LCM濃度測定を提案、結果を薬物動態の特徴から解析・報告した症例を経験したので報告する。LCMは血漿中濃度上昇に伴い有害事象の発現頻度が増加することから、腎機能低下が認められる症例には、予測されるクリアランスの低下を基にした用量調節や、血漿中濃度測定結果を基にした評価が必要である。血漿中濃度の参考値として、臨床試験結果の活用が可能である。有効性と忍容性が確認できた個々のLCM血漿中濃度の把握は、薬物動態変化時の用量調節に有用と考えられることから、積極的なTDMの活用が望まれる。
  • 内田 仁樹, 佐村 優, 小町 和樹, 腰岡 桜, 稲垣 和幸, 廣瀬 直樹, 関根 寿一, 谷川 浩司, 緒方 宏泰
    2021 年 16 巻 p. 53-70
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    現在、心房細動において直接経口抗凝固薬 (DOAC) による抗凝固療法は、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンの4医薬品が用いられているが、その薬物動態について、血中非結合形薬物濃度の変化の推定を評価した報告はない。今回、収集したDOACの基本的なパラメータ値から、臓器機能障害時の血中非結合形薬物濃度の変化の推定を行うと共に、血中薬物濃度/効果・作用 (PK/PD) 関係を表すデータも加味して、添付文書用量の妥当性を検証した。 上記4医薬品のうち、体内からの消失経路からは、ダビガトランは腎排泄型、リバーロキサバン、エドキサバンが中間型、アピキサバンが肝代謝型であり、全ての医薬品の臓器クリアランスは消失能依存の特徴を示していた。また、ダビガトランとエドキサバンはbinding insensitiveであり血中総薬物濃度の変化率は血中非結合形薬物濃度の変化率として取り扱える薬剤であり、一方、リバーロキサバンとアピキサバンはbinding sensitiveな薬剤であり、血中総薬物濃度の変化率の値を血中非結合形薬物濃度の変化率に当てはめられない薬剤であると評価できた。 臓器機能障害時の評価において、ダビガトランでは中等度腎機能障害時にAUCが健康成人に比し3.1倍となるため、添付文書において規定されている用量では過量となる可能性があった。一方で、リバーロキサバンは中等度腎機能障害時でAUCpofが1.19倍、アピキサバンは重度腎機能障害でもAUCpofが1.42倍であり、添付文書において規定されている用量では過少投与となる可能性が示唆された。
  • 新型コロナウイルスワクチン調製技術研修会の実施
    石村 淳, 松村 久男, 樋口 知久, 大野 昭司, 松田 佳和
    2021 年 16 巻 p. 71-76
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス(以下、COVID-19)感染症の感染拡大の中、新たに開発されたワクチンの接種が開始された。しかし、全国民に接種するためには、人員的かつ時間的制約など様々な問題が生じている。そのような現状下で、薬剤師の職能を発揮するためにワクチンの取扱いに専門的知識を有し、調製手技の専門家でもある薬科大学の実務教育の教員が地域の薬剤師会と協議し、ワクチンの性質および取り扱い方法、注射バイアルの希釈・分注等の調製手技の講義を含めた研修会を実施した。その結果、研修会参加者の90%以上がワクチン集団接種会場で、ワクチンの希釈および分注を行っていた。このことから、学術教育研究の専門家である大学教員が主体となって研修会を実施することで、研修会に参加した薬剤師が安心して知識や技能の習得を可能とし、実際にワクチン集団接種会場で責務を果たせていることから、非常に意義のある研修会であったと考えられた。
  • 酸化マグネシウム含有製剤による高マグネシウム血症発症リスク要因解析と発症後の死亡リスクの解析
    土井 信幸, 小見 暁子, 池永 啓介, 大塚 穂乃香, 秋山 滋男
    2021 年 16 巻 p. 77-90
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー
    一般用医薬品において酸化マグネシウムは瀉下薬の主成分、さらに、解熱鎮痛薬の吸収促進剤に含まれている。酸化マグネシウム製剤は高マグネシウム血症による健康被害や死亡例が報告されており、それに伴う医薬品安全性情報が発出されている。本研究は、酸化マグネシウムを含有した一般用医薬品による高マグネシウム血症発症後の重篤な副作用の回避を目的とし、薬剤師や登録販売者が販売する際の、考慮すべき患者背景と適正使用に関する情報提供内容のエビデンスの構築について検討した。 添付文書の調査の結果、瀉下薬かつ第3類医薬品の酸化マグネシウムの1日最大用量は医療用医薬品とほぼ同じ約2,000 mgであった。また、すべての商品で添付資料(患者説明書)に腎機能に応じた投与量の規定は定められていなかった。JADERの解析結果から、60代以上では高マグネシウム血症発症後の転帰死亡の割合は約2倍高かった。また、メタアナリシスからは、腎機能低下(CKDステージG3b以上)の患者では酸化マグネシウムの服用による高マグネシウム血症発症リスクが高いことが示された(RR[95% CI]: 3.14 [1.56-7.45])。 以上の結果より、薬剤師や登録販売者が酸化マグネシウム含有の一般用医薬品の販売時に、医療用医薬品の服薬有無や年齢や腎機能などの患者背景を確認すること、さらに、購入者に対して高マグネシウム血症の初期症状とその対応についての情報提供をすることが重要であると考える。
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