抄録
簡易懸濁法は臨床で医薬品を経管投与する方法として普及している。医薬品の簡易懸濁法の適否に関する情報については医薬品インタビューフォーム(IF)への記載がほとんどなかったが、2019年12月のIFの記載要領改訂により、崩壊・懸濁性および経管投与チューブ通過性に関する情報の記載が可能となった。本研究では、「崩壊・懸濁性および経管投与チューブの通過性に関する情報の記載」などを簡易懸濁法に関する情報とみなし、2020年1月から12月末までに薬価収載された323製品を対象として、簡易懸濁法に関する情報の記載について調査した。結果、記載が確認できた項目は、(1):崩壊・懸濁性および経管投与チューブへの通過性、(2):懸濁液の安定性、(3):懸濁液のpH、(4):個別照会、(5)該当資料なし、(6)該当しない、の6項目であった。記載があった医薬品は、148製品(45.8%)であり、そのうち26製品(8.0%)は個別照会、21製品(6.5%)は該当資料なし、1製品は該当しない(0.3%)であり、直接IFで適否情報を確認できたのは、100製品(31.0%)であった。また、適否情報の記載があった製品のうち、55℃のお湯(水)での崩壊・懸濁時間、チューブ径などを確認できたが、試験方法や適否判定の記載が統一されていなかった。そのため、簡易懸濁法の適否に関する適切な情報をIFから入手することは、現状では難しいことが示唆された。以上の結果から、簡易懸濁法に関する適切な情報をIFから入手するためには、IFの記載要領において、簡易懸濁法の統一した記載基準が望まれる。