1991 年 11 巻 4 号 p. 271-278
“てんかん・失語症候群” は,近年, Landau-Kleffner Syndrome (LKS) と呼ばれている。LKSは,てんかん発作,高度の脳波異常,獲得性言語障害,および,行動異常などが主な症状である。著者らは,言語症状の経過を2型に分類した。すなわち,言語障害の慢性型と比較的短期間に回復する型である。本症例は後者に属する言語回復課程で,経過中に反響言語・常同言語を認め,次に,正常な言語の再獲得ができた。症例は,7歳の男児で,4歳11か月時,多動・集団困難などの行動異常が出現し,続いて脱力発作が数回あった。脳波所見は,側頭優位に周期性の棘波あるいは鋭波を認めた。発作出現と同時に,これまで獲得した受容性・表出性言語が消失し緘黙状態となった。発症4週頃からジャルゴン様の喃語,次に反響言語・常同言語が見られ,徐々に自発語を自然な抑掲で話し,さらに,語彙数が増加した。7歳の現在,言語知的機能はほぼ正常に発達している。