1997 年 17 巻 2 号 p. 178-184
左前頭葉病変によって超皮質性感覚性失語を呈した2症例を報告し,前頭葉内の責任病巣ならびに病態機序,特に前頭葉病変と言語理解障害との関連について検討した。2症例の共通病変は左側脳室前角前外側の中前頭回深部白質にあり,同部の障害によって超皮質性感覚性失語が発現する可能性が示唆された。超皮質性感覚性失語を構成する個々の言語症状のうち,前頭葉病変との関連でもっとも問題となるのは中等度以上の言語理解障害である。自験2症例のうちSPECTを施行した1例では,左前頭葉の比較的広範な領域に血流低下が認められた。最近,左中・下前頭回病変により中等度以上の言語理解障害が生じうることが徐々に示されつつあり,自験例のSPECT所見を考慮すると,左中前頭回深部白質病変によって左中・下前頭回の比較的広範な領域の機能低下が生じ,その結果,言語理解障害が生じた可能性が考えられた。