失語症研究
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原著
伝導失語の改善過程
—発話における誤りの経時的変化を中心に—
大田 めぐみ小嶋 知幸加藤 正弘
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1998 年 18 巻 3 号 p. 215-224

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抄録
伝導失語2例の改善過程について,1) 発話に現れる音韻の誤りの経時的変化,2) 聴覚言語性短期記憶 (以下 STM) 検査成績の経時的変化,の2点について観察し,得られた結果をもとに伝導失語の障害メカニズムについて考察を行うことを目的とした。その結果, (1) 呼称,漢字単語の音読,仮名単語の音読,単語の復唱の発話4モダリティーにおいて誤反応の減少に伴い,誤り内容は類推困難な反応や省略・付加の割合が減少し,部分正答,置換,転置が中心となった。また, (2) STM 検査成績は,時点を追うごとに成績が向上した。以上より伝導失語の経時的変化は発話4モダリティーに共通であり,音韻想起自体の障害から,音韻の選択・配列の障害を経て回復に至ると考えられた。また発話の改善と並行して STM 検査成績も上昇したことから,本症例の障害の根底には音韻の符号化 (選択・配列) 障害があり,現象面で STM の低下として観察された可能性があると考えた。
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© 1998 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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