失語症研究
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シンポジウム
漢字・仮名で書かれた単語・非語の音読に関するトライアングル・モデル (1)
伏見 貴夫伊集院 睦雄辰巳 格
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2000 年 20 巻 2 号 p. 115-126

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抄録
トライアングル・モデルは,視覚的に入力された単語から,文字表象,音韻表象,意味表象を双方向的に計算する並列分散処理型の情報処理モデルである。本稿では漢字,仮名文字列,すなわち漢字や仮名で書かれた単語,非語を,同じ構造と計算原理で処理するトライアングル・モデルを提唱した。従来,漢字語の音読には意味処理が,仮名語の音読には音韻処理が重要であるといわれてきた。しかし,健常成人を対象とした実験では,漢字熟語の音読において読みの一貫性の影響が,また漢字語を仮名書きした同音擬似語の音読において心像性の影響が示され,漢字,仮名文字列の双方に意味処理と音韻処理の寄与を想定するトライアングル・モデルの妥当性が支持された。また一般的には,表層性失読は漢字語に顕著な障害を示し,音韻性失読は仮名非語に顕著な障害を示すといわれる。しかし,トライアングル・モデルに基づけば,これらの失読症状は必ずしも漢字ないし仮名という表記に特異的な障害ではないと考えられ,文献上の失読例の誤読特徴を検討したところ,この予測が支持された。
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© 2000 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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