失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
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原著
失語症者における色彩の想起・認知の障害
—色塗り検査による検討—
大野 恭子浦上 郁子神取 由美子朝田 真理西川 隆田伏 薫柏木 敏宏
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1988 年 8 巻 4 号 p. 291-298

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抄録
失語症者 40名に対し, 直接には言語を用いずに, 線画に色を塗る色塗り検査と, 正しい色塗りを選ぶ検査を行い, これらと SLTA の各項目, 色名と線画の対象名の呼称・聴覚理解, 及び対象の形態の想起 (描画検査) との関係を調べた. 色塗り検査で失語症者の半数が健常群の最低得点を下回る成績を示し, 全失語, 後方領域にも損傷が及ぶ重度の Broca 失語, 意味理解障害が重篤な Wernicke 失語, 超皮質性感覚失語, 及び, 約半数の健忘失語で障害が見られた. 色塗り検査と正しい色塗りを選ぶ検査の成績の間には高い相関が認められた. 色塗り検査の成績は, 復唱や音読の成績とは相関せず, 語の想起や意味理解の成績と有意に相関していた. なお, 色塗り検査と描画検査の間には相関が見られなかった. これらの結果より, 失語症者の色塗り課題の障害には, 音韻を処理し操作する過程は関わらず, 対象の属性を分離・認知する概念操作過程の障害が関与していると考えた.
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© 1988 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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