失語症研究
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原著
特異な言語症状の経過を示した老年痴呆の一例
—長間隔反復言語 (LIP) と反響反復言語について
大塚 晃波多野 和夫重松 一生加茂 久樹
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1988 年 8 巻 4 号 p. 299-304

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抄録

特異な言語症状の経過を示した老年痴呆の一例を報告した. その特徴は反復言語と反響言語の症状変化である. 観察当初, 検者の質問を受けると, 患者はまず質問をそのまま一度繰り返し (反響言語) , それから答えるべきことがらを発話し, さらに引きつづいて, その答えをかなり長間隔で何回も繰り返した (長間隔反復言語 LIP).その後経過と共に反復言語の間隔が短くなり, 通常の短間隔反復言語 SIP になると共に, 患者自身の答えの部分がなくなり, 質問をそのまま反響し, 引きつづいて反響した言葉を反復するという反響反復言語の形式に移行した. このような現象の理解には「意図と自動症の戦い」という概念が重要な意味を与えると思われた. また, 性格変化から始まり, P. E. M. A. 症状群, 前頭葉の萎縮や血流低下が認められる点から, Pick 型痴呆, またはその近縁疾患の可能性が考えられた.

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© 1988 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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