抄録
本稿では、熊本地震後に、オンラインによって行った地震に関するアンケート調査の回答から、留学生の地震時の行動傾向を分析し、今後の日本語教育における課題について考察した。地震後の行動・心理、および日頃の志向性について尋ねた質問項目に対する回答結果について因子分析を行なった結果、7因子が抽出された。7因子のうち、3因子は地震についての情報取得に関わる因子であったが、留学生にとってアクセスが容易なソーシャルメディアが活用されていたと同時に、大学が発信していた日英両言語での情報や、日本語での一次情報も活用されていたことがわかった。また、他の因子のまとまりから、留学生が地震時に積極的に周囲への援助行動を行い、地震経験から前向きな学びを得ていることがわかった。災害時には、日本語が不十分であるという点で情報弱者と思われがちな留学生だが、本研究の分析結果からは積極的に地域社会と関わろうとする彼らの姿が浮かび上がってきた。