2009 年 57 巻 1 号 p. 19-30
魚類の毒性試験における感受性の差異が何に起因するのかについて検討するため,TBTO,TPTC,Cd 及びナフタレンについて,海産魚のマミチョグ及びマダイに対する蓄積性を検討して生物濃縮係数を求めた。一方,急性毒性試験では死亡魚の体内濃度を測定するとともに,急性毒性値に生物濃縮係数(BCF)を乗じた臨界体内残留量(CBR)との比較を行った。生物濃縮試験の結果,TBTO, TPTC 及び Cd は体内濃度が平衡状態に達するまでに 6 週間程度かかったが,ナフタレンは 1 週間程度で体内濃度が平衡状態に達しておりまた,排泄も速かった。今回求めた 4 物質の BCF はマミチョグ及びマダイで近似した値を示し魚種間の差異はなかった。死亡個体中の試験物質の濃度をマミチョグとマダイで比較すると,マミチョグの方がいずれの物質でも高くなっていた。CBR と急性毒性試験における死亡魚の体内濃度とを比較した結果,ナフタレンを除き死亡個体中の濃度の方が CBR よりも低くなっていた。以上の結果から,試験物質に対する感受性は死に至る体内濃度と密接に関連していることが明らかとなり,体内への蓄積量が少量でも死に至る魚種は感受性が高く,高濃度の蓄積量で死に至る魚種は感受性が低いことが明らかとなった。