アーカイブズ学研究
Online ISSN : 2434-6144
Print ISSN : 1349-578X
特集 日本アーカイブズ学会2011年度大会企画研究会報告 〈広がりゆく「デジタルアーカイブ」とアーカイブズ〉
公共放送によるインターネット時代のコンテンツ展開
―NHK戦争証言アーカイブスのこころみ―
宮本 聖二
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 15 巻 p. 16-27

詳細
抄録

NHKでは、2009年8月からインターネットで戦争体験を伝えていく「戦争証言アーカイブス」というサイトの公開を始めた(http://www.nhk.or.jp/shogenarchives/)。NHKが取材して、収集した国内外の戦争体験者およそ600人の証言を中心に、関連するコンテンツを広く公開している(証言者数は2011年8月現在)。2012年夏まで、月に1回20人から20人ずつ証言を増やし、最終的には1000人規模の証言アーカイブにする予定である。

NHKは2007年に、「戦争証言プロジェクト」をスタートさせた。このプロジェクトの目的は、衛星ハイビジョンチャンネル(現在は衛星プレミアム)で放送する「証言記録兵士たちの戦争」(月に1回の放送)を制作し、その取材の過程で収集した戦争体験者のインタビューのビデオテープから、番組で放送したインタビューとは別に長時間の証言動画を作って、インターネットでも公開しようというものである。

太平洋戦争終結から60年を超え、戦争体験をどのようにして継承していくかという、わたしたちの社会が抱える課題へのひとつの試みであり、動画コンテンツをテレビだけでなくインターネットで見る時代における公共放送としての試みでもある。戦争体験をインターネットで伝えるために証言の動画をどのように見せるのか、サイトの構造をどのようなものにするのか、証言の理解を助けるために証言以外のコンテンツに関してどのようなものを公開するのか、プロジェクトをスタートさせてから、公開に至るまでに議論と検討、制作に一年を費やした。制作の過程、アーカイブスの構造、公開から2年を経過してどのように利用され、何が課題なのかを検証する。

著者関連情報
© 2011 日本アーカイブズ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top