2013 年 18 巻 p. 5-22
医学・医療に関する史料には、公文書に代表されるような公的な史料と、病院のカルテや実験データに代表されるような私的な史料がある。公的な史料と私的な史料では、それぞれがもつ特質が異なり、それによって公開状況も異なってくる。医学・医療に関する法律や規則などの政策、国公立病院・療養所の運営といった政策に関わる記録が多く含まれている公的な史料に対して、私的な史料には、カルテ・実験データなどの個人的な事柄が多く含まれている。本稿では、筆者がハンセン病対策に関する研究を行う際に利用した史料をもとに、医学・医療史研究の方向性と史料の関係について考えてみたい。