アレルギー
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DNA 自己感作の1例
菅井 進紺田 進山本 正樹畷 稀吉塚田 貞夫
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1982 年 31 巻 1 号 p. 9-17

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抄録
患者は28歳, 女性.16歳時左下腿の外傷で縫合手術をうけたが, 手術創が治癒せず, 出血性潰瘍となり, 種々の治療に抵抗性で, 合計7回の自己皮膚移植も受けたが現在にいたる12年間に2回, 合計1年間の治癒期間があるのみで, その他の期間は常に出血性潰瘍が持続していた.症状は反復性疼痛性皮下溢血斑, 鼻出血, 吐血, 下血, 血尿と, 皮膚移植片採取部, 外傷部, 採血部の難治性潰瘍であり, 高度の貧血と喘息発作を伴う.家族歴, 既往歴に異常はない.理学的所見は貧血, 皮膚潰瘍と潰瘍瘢痕のほか著変なく, 検査所見は高度の貧血があるのみで, 各種自己抗体も陰性である.自己白血球, 白血球破砕液, 仔ウシ DNA の皮内テストをおこなうと, 5-6時間をピークとして疼痛を伴う赤発, 腫脹, 出血斑が出現し, 24時間で反応は消失した.この反応は各核物質を DNase 処理, クロロキン処理しておくと陰性化することより本患者の病因は DNA 自己感作と考えられた.DNase (Elase) とクロロキンを創部に用いると一時的に出血は止まった.クロロキンの内服ですべての出血と喘息は消失した.しかしクロロキンを中止すると再発するため現在もクロロキンを投与して経過観察中である.
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© 1982 日本アレルギー学会
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