抄録
フルクトース重合体(フラクタン)の一種、イヌリンはキク科植物に多く含まれている水溶性食物繊維であり、そのフルクトース重合度(鎖長)は植物種やライフサイクルによって異なる広い分布性があり、鎖長の異なるものの集合体となっている。先に、秋田県産キクイモのイヌリンは低重合度のものがメインであることを報告したが、本報では秋田県産だけでなく国内産キクイモ共通の特徴であること、および年度によって低重合度の割合が約 20%変化していることがわかった。また、乾燥重量あたりのフラクトオリゴ糖合計値は産地によって約 1.7 倍、遊離糖合計値は約 1.8 倍の差があること、さらに同一の産地、事業者であっても年度によってフラクトオリゴ糖合計値で約 1.5 倍、遊離糖合計値で約 1.3 倍の差があることがわかった。以上より、生鮮品では低重合度イヌリンがメインであることは国内産キクイモに共通するものの、イヌリン糖鎖重合度組成比や遊離糖濃度は産地、事業者、年度によって大きく異なることがわかった。加工品でも原料キクイモのイヌリン糖鎖重合度組成比や遊離糖濃度に依存した組成比になるものが多いものの、加工法によっては大きな差があることがわかった。