抄録
ゲームAIにおけるユーティリティベースAIの中には,目的地への到達などの最終的な目標達成を保証する評価基準を持つゴールベース指標と,局所的な評価のみにより行動を決定し,最終的な目標達成を保証しない非ゴールベース指標がある.ゴールベースと非ゴールベースを足し合わせて両方の考慮を行った場合,ゴールベースの特性が失われて目的達成の保証ができなくなるという問題がある.本研究は,ゴールベースと非ゴールベースを両方同時に利用しても,最終的な目標をできるだけ迅速に達成する行動の実現を目的とする.本研究では,離散ラプラシアンを用いた盛り土関数を使って局所的極値解を回避し,最終的な目標達成を保証する手法を提案する.例として,ゴールベースを目的地到着,非ゴールベースを追跡エージェントからの回避行動とし,追跡エージェントを回避しつつ目的地到達を迅速に行うというAIを盛り土関数を用いて実現した.また,盛り土関数の調整係数はAIの体力や停滞度の数値を使用しファジー推論を用いて動的に変更するようにした.