芸術科学会論文誌
Online ISSN : 1347-2267
ISSN-L : 1347-2267
20 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
一般論文
  • 天野 憲樹
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 72-81
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    我々は音楽と色彩を研究対象とし,「着る」という音楽の新しい楽しみ方を創造するとともに,そのエンターテインメント化を探求している.具体的には,音楽からカラフルなコスチュームの映像をリアルタイムに形成し,人の周囲に生成したフォグにプロジェクターで投影することにより「着衣」とする.このため本研究では,音楽を立体的に色彩化する手法,音楽からコスチュームの映像を形成する手法,そして,音楽の映像を身に着ける手法を提案する.核となるアイディアは,音階の螺旋構造と共感覚に着目した音楽の立体的な色彩化,ジェネラティブ・アートの技法によるコスチュームの映像形成,投影媒体のフォグに対する3方向からの映像投影である.しかし,フォグの制御は難しく,フォグへの映像投影は結果的にうまくいかなったため,フォグの代わりに白衣やマネキン本体に直接コスチュームの映像を投影するなどの実験も行った.本研究により,特殊な感覚の保持者だけではない誰もが音楽を「身に付ける」ことができるというこれまでにない音楽の楽しみ方が実現されるだけでなく,音楽とファッションが融合した新たなエンターテインメントの世界が創出される可能性も期待できる.
  • 小林 和彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 82-89
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,ゲームエンジンであるUnreal Engine4を用い,作者の操作に応じて映像を変化させて,楽曲をリアルタイムに制御する手法の研究について述べたものである.具体的には,発音するオブジェクトを3DCGの空間内に配置し,作者の操作によって空間を移動する事で音の時間的な組み合わせ方を変化させる.そして,この手法を映像作品の制作に活用するためのモチーフや表現方法,プログラムについて検討するため,1点の試作映像と4点の映像作品を制作した.本稿ではこれらの作品の詳細について述べた上で,本研究の手法が作品の制作過程に及ぼす影響を明らかにする.
  • 星野 准一, 宇津呂 武仁
    原稿種別: 解説論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 90-100
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    エンタテインメントは私たちの生活を豊かにするとともに,経済的にも大きな影響力を持っている.近年のエンタテインメントは多様化しつつあり,従来のゲーム,アニメ,映画,体験型アトラクションなど個々が独立したものではなく,横断的に体験できるものも増えてきている.しかしアニメやゲームなどの特定分野の専門スキルを習得するカリキュラムは実施されているが,エンタテインメントは多様であるため必要となる知識やスキルも幅広く体系化が難しい.またxR(VR/MR/AR), リアルタイムCG, ゲームAI, IoT(internet of things)などの高度な技術を利用したものが増えているが,既に開発されたツールを活用するだけでなく,原理に遡って理解することや独自の新技術を開発できることも重要となる.本稿では,エンタテインメント工学教育のコンピテンシーを,基礎力,デザイン力,プロデュース力に整理するとともに,大学の学部や前期・後期課程の大学院を想定したカリキュラムの構成例について述べる.また筑波大学での2002年からの学部や大学院での授業例と研究事例を紹介するとともに,今後の課題について考察する.
  • 森山 剛, 三橋 航太, 木村 瑞生, 東 吉彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    近年,日本では15 歳以上の約6割の人が運動不足だと言われている.運動不足解消には有酸素運動と無酸素運動のどちらも行うのが有効である.しかし,単調な運動は継続することが難しい.また,高齢者や何らかの障害を抱えた低体力者は,低強度で休息を許す有酸素運動に限定される.本研究では,環境を変えることが運動の継続性を高めるかを実験により明らかにすることを目的とし,バイクをこぐ有酸素運動を行う際の室内照明色を,赤,緑,青,照度3段階の白色に変化させたときの,アンケートによる心的負荷及び自覚的運動強度,心拍数を観測した.実験の結果,カルボネン方式による20%強度の低強度有酸素運動において,赤色照明が青や白色光に比べて被験者を興奮させ,逆に白色光は赤色照明よりも被験者をリラックスさせることが分かった.これらの心理的な有意差が現れた一方で,身体面(心拍数)には照明色の違いによる影響はなかった.
  • Junjie Shan, 西原 陽子, 山西 良典, 前田 亮
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 108-119
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    日本のアニメはジャパニメーションと呼ばれ,その芸術性が高く評価されている.アニメを通じて日本に興味を持ち,日本語の学習やリスニング練習を始める人も多い.我々はリスニング練習の教材としてアニメが利用できる可能性に着目した.1つのアニメのエピソードの中には1つの会話だけでなく,部分会話が多数含まれている.各部分会話に含まれる単語や表現が異なることから,部分会話の難易度も異なると考えられる.本研究ではアニメの会話のスクリプトが与えられると,部分会話へ分割し,それぞれの難易度を自動的に推定する手法を提案する.練習者に適した難易度の部分会話を提供することにより,リスニング練習の支援を図る.評価実験では被験者に事前テストの受験後に,部分会話を視聴することによるリスニング練習をさせ,その後事後テストを受験させた.実験の結果,日本語能力検定試験の難易度がL2のグループにおいて,単にアニメの部分会話を視聴する群ではテストの正解率の伸びは10.6%であったが,難易度が推定された部分会話を視聴する群では伸びが26.4%であり,提案手法の有用性を確認できた.
  • 松井 哲也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 120-128
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    地方自治体や地域密着型企業をアピールするために利用されるマンガ的なキャラクターである「ご当地萌えキャラ」は、現在では日本各地非常に多くの種類が展開されている。しかし、そのデザインメソッドについては十分に分析されておらず、特にこれらのキャラクターがその主たる目的である「商品や観光サービスの購入意欲の促進」という目的に叶ったデザインを有しているかどうかについては、ほとんど検討されていない。本研究では、「ご当地萌えキャラ」の外見デザインが受け手に与える影響の因子を明らかにするために、質問紙調査を行い、その結果に対して因子分析を実施した。先行研究ではバーチャルキャラクターの外見デザインには"reality"と"familiarity"の2因子が存在することが明らかにされているが、本研究で同様の質問紙を用いて分析を行った結果、「ご当地萌えキャラ」においても同様の2因子が確認できた。また、これらの因子得点と商品推薦効果の相関を調査した結果、"familiarity"因子と商品推薦効果との間に高い相関が見られた。さらに、キャラクターの等身によって「ご当地萌えキャラ」を2グループに分類し、グループ間で因子得点の分散分析を行った。その結果、頭身の高いキャラクターのほうが、より高い商品推薦効果を持つことが明らかになった。
  • 宮野 友弥, 斎藤 博昭
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    ポピュラー音楽のボーカルメロディから,聴きやすさを考慮した自動歌詞生成についての研究を行った.歌詞については散文的意味に加え,音楽的な要素の双方を同時に考慮する必要がある.そのため生成段階においても評価段階においても困難な課題であると言える.本稿では人間の手助けを必要とするサポートシステムという形ではなく,ボーカルメロディを入力するだけで言語モデルが自動的に歌詞を出力するシステムを構築する.人間による解析を用いることなく,データを学習してメロディに対して柔軟性を持った歌詞生成することを目指した.具体的には音符列をシーケンスとみることにより,機械翻訳によく用いられるseq2seqとTransformerを適用した.評価には単語密度という簡易版の尺度を導入するとともに,各言語モデルが出力した歌詞をソフトウェアで音声合成し,7人の被験者による主観評価で,聴きやすさ,意味,全体的なクオリティについての評価を行った.また,データ数による学習到達度の違いにも簡易的に評価して考察した.全ての手法でテスト曲の歌詞生成時にある程度の言語的な乱れが見られたが,その中ではTransformerが最もメロディに応じた自然な歌詞を生成した.
  • 古川 真帆, 阿部 雅樹, 渡辺 大地
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 139-148
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ゲームAIにおけるユーティリティベースAIの中には,目的地への到達などの最終的な目標達成を保証する評価基準を持つゴールベース指標と,局所的な評価のみにより行動を決定し,最終的な目標達成を保証しない非ゴールベース指標がある.ゴールベースと非ゴールベースを足し合わせて両方の考慮を行った場合,ゴールベースの特性が失われて目的達成の保証ができなくなるという問題がある.本研究は,ゴールベースと非ゴールベースを両方同時に利用しても,最終的な目標をできるだけ迅速に達成する行動の実現を目的とする.本研究では,離散ラプラシアンを用いた盛り土関数を使って局所的極値解を回避し,最終的な目標達成を保証する手法を提案する.例として,ゴールベースを目的地到着,非ゴールベースを追跡エージェントからの回避行動とし,追跡エージェントを回避しつつ目的地到達を迅速に行うというAIを盛り土関数を用いて実現した.また,盛り土関数の調整係数はAIの体力や停滞度の数値を使用しファジー推論を用いて動的に変更するようにした.
  • 熊谷 龍之裕, 古舘 守通, 今野 晃市
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 149-159
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    近年,VR技術を教育に活用する事例が多くみられる.特に歴史の教育では,VR技術は体験学習として活用されている.しかし,VRを使った歴史教育にはいくつか課題がある.そのうちの一つに,VRシステムに用いる三次元モデル作成の難しさがある.特に,歴史的町並みは手書き地図等で表されており,詳細な数値情報を得ることができないため,三次元モデルの作成はより困難な課題となる.この課題を解決するために,本論文では数値情報の無い手書きの地図から地形の三次元モデルを作成する方法を提案する.また,作成した三次元モデルを用いた複数人同時体験可能なVRシステムを開発し,作成した三次元モデルの有用性を検証する.
  • 丸山 健太, 松山 克胤
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 2 号 p. 160-170
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本研究は,海況と漁獲との関係を分析するための可視化手法を提案する.短期的かつ地域レベルで人が漁獲を予測するためには,まずは海況と漁獲との関係を理解することが不可欠であると考えて,その取り掛かりとして両者の関連性を視認できるような情報可視化ツールを開発する.本研究は,インタラクションにより,全体を見てから細部を詳細に見るような(Coarse-to-Fine的な)ユーザインタフェースをデザインする.具体的には,漁獲量の時系列グラフによる全体的な視認からスタートし,調査条件を満たす代表的な海況の把握,そして,海況の部分的な特徴を調査できるようにする.上記ユーザインタフェースの実現のために,対象とする海況に似た海況データを集める手法や,海況の部分的な類似性と相違性を可視化する手法などを新たに開発する.本提案の可視化ツールを実装し,ユーザインタフェースの効果を確認する.
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