女性学年報
Online ISSN : 2434-3870
Print ISSN : 0389-5203
女子校という教育環境
共学校環境における隠れたカリキュラムの検討に向けた予備的考察
上野 優希
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 46 巻 p. 46-67

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抄録

 本研究は、日本の学校教育における女男平等の認識と現実のギャップに着目し、女子校を分析することで、共学校の隠れたカリキュラムを理解するための示唆を得ることを目的とする。調査および現地視察の結果、女子校では生徒が安心して自己表現やリーダーシップを発揮できる環境が整備されていることが示された。一方で、共学校でしばしば見過ごされる男子からのからかいや教師の一律的指導態度などの問題は、女子校では排除されていることが明らかになった。また、中等教育段階でのジェンダー規範の強化が、生徒の自己肯定感や主体性の発揮に影響を与えることが示唆された。

 これらの結果は、女子校の「例外的環境」が、共学校における無意識の慣習や前提―すなわち「隠れたカリキュラム」―を照射し、その構造を可視化する上で有効であることを示している。さらに、教育実践におけるジェンダー感受性の再考や、制度的平等を超えた文化的・心理的次元での改善の必要性が示唆される。

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© 2025 日本女性学研究会『女性学年報』編集委員会
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