抄録
姿勢と温度の異なる条件下で,breath holding method で測定された成人男女8名の安静時肺拡散能(DL),膜拡散能(DM)および肺毛細管血液量(VC)の変化が調べられた。tilting bed を用いた姿勢は仰臥位および45°のhead up position であり,温度は15,25,35°Cの三条件であった。すべての条件下で DL は VC の変化と密接な関係を示した。DL と VC に対する姿勢効果は男女いずれも有意に認められた。しかしながら,DL と VC に対する温度の効果は,男子で有意であったが女子では曖昧であった。この原因として,女子において温度刺激に対する肺動脈圧の変動幅が小さいこと,また肺の大きさが小さいことが示唆された。安静時において,広い範囲にわたる VC の変化に対する DL の関係は男女いずれも曲線的であった。これは VC 増大の主体が毛細管の増員から拡張へと移行する過程を反映するためと考えられた