人類學雜誌
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北海道大岬出土のオホーツク文化期頭骨の形態について
石田 肇
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1988 年 96 巻 1 号 p. 17-45

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抄録

北海道稚内市大岬遺跡から出土したオホーツク文化期に属する20数個体の頭骨の計測値ならびに形態小変異出現頻度を調査し,報告した.頭骨計測値を用いて,大岬人骨を,北海道アイヌ,サハリンアイヌ,モヨロ貝塚人,縄文時代人,現代日本人,中国人,朝鮮人,および北方モンゴロイド諸集団と比較した.その結果,大岬頭骨は,北方モンゴロイドの形態的特徴を持ち,同じオホーツク文化のモヨロ貝塚人と同一集団とみなされる.このオホーツク文化系集団は,計測値では,北方モンゴロイド集団中,アムール河下流域に住むナナイやウリチに近く,またアジアエスキモーにも近い.しかし,アムール河下流域に7-8世紀に栄えた鞍鞨文化のトロイツコエ墓地より出土した頭骨は,オホーツク文化系集団とはあまり類似せず,民族的起源をアムール河下流域のみに求めるのは早計かと思われる.大岬出土人骨の一部にアイヌ的特徴を持つ頭骨が存在することから,北海道アイヌと大岬頭骨の各個体についてユークリッド距離を基にクラスター分析を行なった.それによると大岬の一部はアイヌ集団に含まれ,オホーツク文化期の墳墓出土人骨のうち少数にはアイヌ的形質が見られることが計測値の上からも示唆される.

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