人類學雜誌
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ヒトの四肢筋における静的収縮に対する疲労性の相違
佐藤 陽彦大箸 純也
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1988 年 96 巻 2 号 p. 137-145

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抄録
成人男性の7つの四肢筋群について,最大随意筋力(MVC)の5,10,15,20,30,40,50%の各収縮強度で等尺性収縮を持続させ,「だるさ」及び「痛み」の自覚症状出現時点と,収縮最大持続時間を記録した.収縮が45分に達したときは,45分で収縮を打ち切った.被験者は各筋群5~7名であった.
相対的筋力(F%MVC)とだるさ及び痛み発現までの時間,或いは収縮最大持続時間(T分)との関係をlogT=a+blog(F-k),0≦k≦30の式にあてはめ,決定係数の値によって最もよく適合する式を求めた.収縮最大持続時間に関する式における定数 k,a,b はそれぞれ,肩関節外転筋については3,2.02,-1.22で,肘関節屈筋については0,4.33,-2.52で,肘関節伸筋については2,3.05,-1.81で,膝関節屈筋については0,3.05,-1.63で,膝関節伸筋については8,1.96,-1.23で,足底屈筋については0,4.53,-2.47で,足背屈筋については0,4.51,-2.48であった.痛み発現時に関する式におけるこれらの定数はそれぞれ,肩関節外転筋については2,1.64,-1.09で,肘関節屈筋については0,3.33,-1.99で,肘関節伸筋については2,2.25,-1.43で,膝関節屈筋については0,2.94,-1.78で,膝関節伸筋については8,1.35,-0.96で,足底屈筋については0,3.88,-2.16で,足背屈筋については0,3.90,-2.24であった.
本研究において調べた筋のうち,最も疲労し易いのは肩関節外転筋であった.最も疲労し難いのは足底屈筋と足背屈筋であり,肘関節屈筋がこれらに次いで疲労し難かった.膝関節伸筋は強い収縮強度では比較的疲労し易いが,非常に弱い収縮強度では比較的疲労し難いという特徴を示した.逆に,高い収縮強度では比較的疲労し難い膝関節屈筋は,収縮強度が低くなると疲労し易くなり,低い収縮強度では肘関節伸筋と同じ程度の疲労性を示す傾向をもった。
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