応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:応用糖質科学シンポジウム】 植物細胞壁ペクチン生合成機構解明への幕開け
竹中 悠人石水 毅
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2020 年 10 巻 2 号 p. 96-102

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抄録

ペクチンは植物細胞壁の構成多糖の一つで,13種類の単糖成分,30種程度の糖結合様式を含む複雑な構造をしている.このペクチンの生合成には30種程度の糖転移酵素が関わっていると考えられている.しかし,ペクチン構造の複雑さ,遺伝学の適用のしにくさのため,それらの糖転移酵素遺伝子の同定は進んでいない.我々は「逆生化学」的手法を適用して,新たな糖転移酵素ファミリーGT106を見出し,そのうちの一つのサブファミリーがペクチン主鎖を生合成するラムノース転移酵素であることを突き止めた.シロイヌナズナには34種類のGT106酵素遺伝子がコードされているが,ペクチン関連遺伝子との共発現解析などから,GT106にはペクチン生合成に関わるものが多く含まれると考えている.「逆生化学」的手法の確立とGT106の発見により,ペクチン生合成機構解明への幕が開いたと捉えている.この総説では,ペクチン生合成・生理機能の研究の現状を解説し,この分野の今後の楽しみな展開について述べる.

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© 2020 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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