セラチア菌由来キチン加水分解酵素SmChiAは,結晶性キチン上を運動する様子が初めて報告されたキチナーゼの一つである.しかしその運動機構は未だ不明であった.そこでSmChiAを金属ナノ粒子で標識し,全反射暗視野顕微鏡を用いてその運動を高速高精度で計測することにより運動機構の解明を試みた.その結果,SmChiAは主にジアセチルキトビオース単位に相当する1.1 nm刻みで前後に運動しており,その前進運動の確率は後退運動に対する加水分解反応の割合とほぼ同じであることがわかった.よってSmChiAは熱ゆらぎにより前後に運動し,分子鎖末端からキトビオースを切り離すことにより後退運動を抑制して運動方向性を生み出す“burnt-bridge”ブラウニアンラチェット酵素であると推定された.