消化管から分泌されるムチンは,O-グリカンが高密度に付加した粘性糖蛋白質である.小腸や大腸から分泌されるMUC2ムチンは強固なゲルを形成し上皮を物理的に保護するバリア機能を持つが,分泌されて時間が経過するとともに緩いゲル層に変化し腸内細菌の生息環境となる.ビフィズス菌やウェルシュ菌などの腸内の常在菌は,利用できる糖質の乏しい消化管下部で生息するために,難消化性のムチン糖鎖を分解するための酵素群を持つ.本総説では,善玉菌であるビフィズス菌が持つムチン糖鎖分解酵素群の全体像と,悪玉菌であるウェルシュ菌が持つムチン分解に関わる特異なエンド型グリコシダーゼについて,筆者らが明らかにした知見を中心に解説する.