応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
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【総説:―受賞論文―】 澱粉生合成メカニズムの解明と変異体米を用いた新品種の開発
藤田 直子
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2022 年 12 巻 1 号 p. 4-7

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抄録

米は日本人の主要な炭水化物源であり,穀物の中でも澱粉の純度が最も高い.澱粉生合成には多くの酵素が関与しており,その変異体の単離と分析から澱粉の主成分であるアミロペクチンの生合成モデルが構築され,澱粉生合成メカニズムの解明に大きく貢献した.また,変異体米の中には,通常の米品種とは全く異なる構造や物性を示す澱粉を貯めるものがあった.特に,食感が異なったり,機能性を示す可能性を持ったりする変異体米は実用化のため,戻し交配による品種改良を行い,品種登録申請した.スターチシンターゼ (SS) IIIa欠損変異体は高アミロース性を示し,食感が独特な「あきたぱらり」および「あきたさらり」となった.SSIIIaと枝作り酵素 (BE) IIbを同時に欠損した二重変異体は,レジスタントスターチ (RS) が通常の米と比べて10倍高く,血糖値上昇抑制作用が証明された.この変異体は超多収米との戻し交配によって,高RS米「まんぷくすらり」となった.「まんぷくすらり」の炊飯米や米粉は,通常品種と比べて120分までに消化される澱粉が有意に少なく,16時間でも消化されないRSが有意に多かったため,今後,機能性食品の開発に有効である.

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© 2022 一般社団法人 日本応用糖質科学会
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