2026 年 16 巻 2 号 p. 57-62
難消化性澱粉(レジスタントスターチ,RS)は消化されにくい澱粉であり,食後血糖値の上昇が穏やかになる.また,消化されずに大腸へ到達した澱粉は,食物繊維のように腸内環境の改善に貢献するため,その健康増進効果が世界的に注目されている.一般的な米のRS含量は1%未満であるが,アミロース含量が高いほどRS含量は高く,アミロペクチンの短鎖が少なく長鎖が多いほどRS含量が劇的に増加する.RS含量は調理法(生澱粉/糊化澱粉)や咀嚼の程度(表面積や塊の大小)だけでなく,イネを育成中の気温,特に開花から完熟までの登熟気温によっても多少変動し,収量などの農業形質に影響する.炊飯米の食味とRS含量は相反するため,美味しくRSを摂取できるように,米粉やゲルにすることで,その特徴を活かした用途開発を行っている. このような背景から,米澱粉のRS含量の制御に向けて,1)RS含量を増やすにはどのような澱粉構造が必要なのか,2)どの澱粉生合成関連酵素の発現を欠失もしくは促進すると,そのような澱粉構造になるのかについて,枝作り酵素(BE),枝切り酵素であるイソアミラーゼ1(ISA1),スターチシンターゼ(SS)などの酵素間のバランスに着目したイネの研究例を紹介する.