応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
Online ISSN : 2424-0990
Print ISSN : 2185-6427
ISSN-L : 2185-6427
総説―応用糖質科学シンポジウム―
イネの澱粉代謝制御~α-アミラーゼの細胞分子生物学的研究から新品種開発へ~
三ツ井 敏明
著者情報
ジャーナル 認証あり

2026 年 16 巻 2 号 p. 63-71

詳細
抄録

イネのα-アミラーゼは,他の穀類α-アミラーゼには見られないアスパラギン結合型糖鎖を有し,糖鎖構造が異なる数十種類のプロテオフォームが存在する.その糖鎖の有無は酵素熱安定性に関与し,イネα-アミラーゼの特徴的な耐熱性をもたらしている.発芽イネ種子においては,胚盤上皮細胞および糊粉層細胞でα-アミラーゼが生合成され,澱粉貯蔵組織の胚乳に分泌され,貯蔵澱粉の分解が行われる.α-アミラーゼの発現や分泌は植物ホルモンのジベレリンとアブシシン酸の量比バランスによって調節されている.この発芽穀類種子における貯蔵澱粉の分解は植物全体から見た澱粉分解生理においては特殊な事象である.通常,澱粉の代謝は細胞内小器官プラスチドで行われる.私達は,生理・生化学・分子生物学やバイオイメージングの手法を駆使して,分泌性糖タンパク質であるイネα-アミラーゼ(AmyI-1)が分泌経路からゴルジ装置を経てプラスチドに輸送・局在化して機能することを見いだした.この発見が,高温登熟によるコメの品質低下にα-アミラーゼが関わること,そして澱粉代謝制御による高温登熟耐性コシヒカリの開発につながった.

著者関連情報
© 2026 一般社団法人 日本応用糖質科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top