応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌
Online ISSN : 2424-0990
Print ISSN : 2185-6427
ISSN-L : 2185-6427
【総説:応用糖質科学シンポジウム】 担子菌系酵母Moniliella megachiliensisの浸透圧ストレス応答とポリオール生成による適応戦略
岩田 悠志小林 洋介吉田 潤次郎水島 大貴春見 隆文
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 6 巻 2 号 p. 117-123

詳細
抄録

担子菌系酵母Moniliella megachiliensisのポリオール生成につき,浸透圧ストレス応答と環境適応の観点から,その代謝制御系の解析を行った.エリスリトールは対数増殖期以降,erythrose reductase (ER) の遺伝子発現の増大に同調して大量に生成した.また,本遺伝子を強制発現した出芽酵母ではエリスリトールの生成が見られなかったことから,ERは本菌に特異的な酵素であると考えられた.浸透圧ストレスのシグナル伝達に関わるMAPK Hog1は,出芽酵母のそれと高い相同性を有するもののC 末端領域がやや長く,このことがポリオール生成能の差に反映していると推定された.一方,エリスリトール生成を担うペントースリン酸経路 (PPP) には,2,3個の相同遺伝子をもつことが判明した.特に,解糖系とPPPとの共役部位に位置し,エリスリトール生成に重要な役割を果たすtransketolase遺伝子とtransaldolase遺伝子にはER遺伝子と同様,複数の相同遺伝子が存在し,ストレス応答転写因子結合領域であるSTRE 配列を有していた.それら相同遺伝子の発現動態は浸透圧 (NaCl) や酸化 (menadione) などのストレスによって異なるが,エリスリトール生成量とは相関性を示した.また,浸透圧剤 (NaCl,グルコース,ソルビトール) の種類により,細胞内ポリオールの生成比が変化することがわかった.

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本応用糖質科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top